パフォーマンス理論 その23 最高速度について
Japan In-depth / 2019年7月18日 7時0分
地面に加える力が移動速度を決めているとすると、その加える力を高めるために腕の振りは大きな役割を果たす。上半身のねじれを抑えるために腕は大きく貢献しているが、さらに地面に圧を加える際にも腕の振りは貢献している。アナログの体重計の上で腕を振ってみると、針が触れるのがわかる。腕を下に下ろした時に足の裏を通じて地面に圧が加えられているからあ。この力を利用しスプリンターは地面に力を加え、反力をもらっている。
最高速度を出している時には、周りで見ているよりも激しく動いていない。むしろ中心は静的で手足のみが動的だ。手足も出来るだけ中心に近いところで動かしている。記憶に残っているのは確かカナダのコーチがスリンというカナダ選手が銀メダルをとった時に、しきりにゴール前20mで手が体から離れたことを悔やんでいた。中心から遠いものを動かすには力がいるし、遅くもなる。ではどうすれば手足が中心の近くで捌けるかというと、テクニックと、そして身体の中心部(ユニフォームで隠れる部分)の強さによって決まる。実際に地面を踏む出力を出すのはハムストリングや臀部になるが、そこが強く力を発揮するには相応のポジションを取らなければならない。スポーツでは主要な筋肉がいくら強くても、その筋肉が力を発揮できるようなポジションが取れなければ機能しないことがよくある。その場合むしろ補助的に見える筋肉が決定要因になっている。大砲をいくら強くしても、照準を合わせ打った時にずれないようにストップする土台がなければ意味がないのと似ている。
スプリンターのここ30年の変化を見ると、股関節伸展が小さくなっていること、下半身より上半身が肥大化していることがあげられる。つまり昔は股関節を大きく開き使って蹴って走っていたものが、次第に股関節をあまり開かず地面につくタイミングに合わせるようになり、代わりに上半身を大きく強く使って地面への圧を高めているという傾向にあるように見える。つまり自分の体の下に足が来るタイミングでタイミングを合わせて上半身で押し込みそのあとすぐ足は前方へ運び後ろで流れないようにしている。
最後にまとめてみたい。最高速度に制限をかける要因は、
①接地している間に十分な力を出せなくなる
②足が前方に運べなくなる
③手足が中心から離れコントロールできなくなる
あたりだろうと思う。皆さんよくお分かりのように、これらはどれが原因でどれが結果かわからないほど相互に影響しあっている。タイミングによってそれぞれに目的を変え改善しているのがスプリンターの世界だと認識している。
トップ写真)Pixabay Photo by lubhz
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