パフォーマンス理論 その25 メディアについて
Japan In-depth / 2019年7月20日 7時0分
同じように、活字のメディアは字にこだわる。例えばオリンピックパラリンピックだけで12文字も使ってしまう。五輪にすれば短いが、五輪という言葉に人はパラリンピックが含まれると認識するだろうかということに、文字制限のある新聞はこだわらざるを得ない。また見出しも短くわかりやすくしなければならない。このような特性があるので、活字のメディアの記者と対峙する時はなるべく事実関係をクリアにして、わかりやすく話し、最後に見出しになるような短文のまとめを話すようにしていた。丁寧に説明するところは同じだが、新聞とテレビでは要点が言葉なのか絵なのかの違いが大きい。
自分がいい成績を残した時、早く反応があったものに振り回されてはならない。メディアは旬なものを旬な時に伝えることが重要なので、いい時にだけきて、と穿って見る必要はない。一つ一つ丁寧に対応すればいいだけだ。ただ、往往にして本当のファンは反応が薄い。この人たちは今だけではなく日常的に気にかけてくれて、応援してくれている。そしてその人たちは長く見ている分、奥の方まで理解して応援している。旬になった時、嬉しいのは人間の性なのでしょうがないが、反応の薄い、だけれどもおそらくこれからもずっと応援してくれるであろう人を忘れないようにしたほうがいい。長く見ている人にとっては旬に踊らされている姿もメディアを通じてよく見える。
私が運が良かったのはそれほどメジャーではないハードルという競技だったから、いくら言いたいことがあってもそれを伝えてくれるメディアがなかったことだ。その時のフラストレーションがあるから、今になっても目の前の人が自分の話を聞いてくれるという感動が薄れにくくなっている。また、取材がなかった頃、ありとあらゆるメディアの取材を受けた。少女漫画の雑誌もあれば、宗教に関するもの、なんでもあった。それを繰り返すうちハードルのことを説明するにも、相手の人生経験を想像しながら話さないと伝わらないということを理解できるようになった。振り向いてもらえなかった期間が長いので、メディアに対する愛着も深いのかもしれない。
最後に私が好きな言葉を。どこかの選手の言葉らしいが、調べても出てこなかったので出典不明で紹介したい。
「アスリートには勝ちたい選手と、何かを伝えるために勝ちたい選手がいる。私は後者でありたい」
トップ写真)Pixabay Photo by paulbr75
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