勢いと偶然と判断ミスと世界
Japan In-depth / 2019年7月23日 18時0分
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
「宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2019#30」
2019年7月22-28日
【まとめ】
・IAEA(国際原子力機関)天野之弥事務局長逝去。
・世界は「勢いと偶然と判断ミス」が支配する不確実性の時代に回帰。
・イラン、米CIAスパイとして機密情報収集した容疑で17人逮捕。
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今週は悲しいニュースから始めざるを得ない。IAEA(国際原子力機関)の天野之弥事務局長が18日に亡くなった。神奈川県出身の天野さんは中学・高校だけでなく外務省でも先輩だった。筆者が外務省を辞めた後の2009年からアジア初のIAEAトップとなったが、能力も人柄も真に尊敬に値する大先輩だった。ご冥福をお祈りしたい。
▲写真 天野之弥事務局長(中央)出典:Flickr; IAEA Imagebank
先週末、キヤノングローバル戦略研究所(CIGS)が近未来の東アジアを想定した演習を開催した。通算で31回目となるが、今回も約50人の現役公務員・自衛官、専門家、政治学者、ビジネス・ジャーナリズムの精鋭が集い、日米中韓朝台各政府・報道関係者を一昼夜リアルに演じてくれた。彼らの知的貢献に心から謝意を表したい。
筆者にとっては今回初めてテーマ選定から実際のゲーム進行まで全てを慶応大教授でCIGSの研究仲間でもある神保謙さんにお願いした。成果があれば神保さんたち若手の手柄、万一粗相があれば宮家が「首を洗って待っている」という責任分担だ。結果は来月早々参加者たちから聴取する予定であり、ここでは概要のみを記そう。
今次演習では202X年に二つの大事件が同時に起きると想定した。第一は米国大統領が、北朝鮮のICBM破棄と引き換えに金融制裁解除と4年以内の在韓米軍段階的撤退に同意したこと。第二は、台湾が外交関係を持つ国を全て失う一方、台湾の金門島で行われた住民投票で「中国への帰属」意見が多数を占めたことだ。
筆者個人の見立ては今週のJapanTimesと産経新聞のコラムに英語と日本語で纏めておいた。ご一読願えれば幸いである。最近世界は「勢いと偶然と判断ミス」が支配する不確実性の時代に回帰しつつあると考えてきたが、そんな時代が欧州、中東だけではなく、遂に東アジアでも現実になりつつあるというのが率直な印象だ。
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