英仏「信念の政治家」の相克(上)今さら聞けないブレグジット その5
Japan In-depth / 2019年7月31日 18時0分
この短い言葉からも容易に読み取れるように、ヨーロッパ統合を推進した政治家たちは、日本をあまり高く評価していなかった。想像を交えて語ることをお許しいただけるなら、戦後半世紀以上を経て、世界第一流の経済大国となってもなお、政治・外交面では米国の属国もしくは半植民地のような状態にある、と映ったのではないだろうか。
こう述べると、(当たっている面もあるだけにつらい)などと思われた読者も、おられるのではあるまいか。
そう言えば、ミッテラン政権の誕生に先駆けて、1979年に当時のECが、世界の経済動向を分析した、本来は非公開の報告書の中で、日本人のことを「ウサギ小屋に住む仕事中毒」などと評していたことが明るみに出たのを、ご記憶ではないだろうか。この時も大多数の日本人は、怒るどころか自虐的にこの評価を肯定し、ウサギ小屋というのが流行語のようになった。
念のため述べておくと、高額の家賃を払っても小さな部屋しか借りられない、というのは、東京など過密した大都市の特殊事情であって、全国レベルで見れば、持ち家率や平均的専有面積など、日本の住宅事情はヨーロッパ諸国との比較で言っても、そう悪くはない。
それはそれとして、日本においてEUや統一通貨ユーロという統合の成果が、もうひとつ高い評価を受けられず、統合の動きに対して距離を置く英国の政治家が人気を得るのは、お互いに島国だという親近感の他に、フランスの政治家たちの、日本に対するこうした辛辣な評価にも、原因の一端があるのかも知れない。
またまた念のため述べておくと、彼らは自国フランス以外の国のことを、決して賞賛しないと言って過言ではないのだが。
このドロールとサッチャーとの間に起きた確執とその結果については、本稿の(下)でもう少し詳しく見る。
(その5(下)につづく。その1、その2、その3、その4)
トップ写真:ジャック・ドロール氏 出典:Wikimedia Commons; User:nvpswitzerland
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