経済のデジタル化と金融仲介
Japan In-depth / 2019年8月3日 11時21分
神津多可思(リコー経済社会研究所所長)
「神津多可思の金融経済を読む」
【まとめ】
・一国の経済において平均所得水準が上がるとサービス化が進む。
・経済のデジタル化が、現在の金融仲介に影響与える。
・新デジタル・サービスの供給に資する金融仲介の実現が急務。
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第四次産業革命という言葉が聞かれるようになって久しい。シェアリング・エコノミー、モノのインターネット(IoT)、ビッグ・データ、人工知能(AI)といった言葉で語られる第四次産業革命の底流にあるのがデジタル化だ。
元々、一国の経済において、平均所得水準が上昇していくに連れてサービス化が進むことは指摘されてきた。ペティ=クラークの法則というのを社会の教科書で目にした記憶のある方も多いのではないか。人間が生存する上で、まず重要なのは食。次に衣が足りて、住も備わると、次第にサービスを欲するようになっていく。そのトレンドの上に、21世紀ではデジタル化の動きが重なる。
私達の身の回りにある様々な情報が、機械に理解できるかたちでデータ・ベース化され、それに基づき機械が定型的な判断を示し、人間がそれを了とすれば機械が必要な動作をしてくれる。そういう社会が来ようとしている。
企業のビジネスがその方向に進むと、利益の源泉は次第に目にはっきりとはみえないものに変化していく。第一次産業革命以前、富を生んでいたのは主に人と土地だった。それが次第に機械に変わり、そして情報へと変わった。企業にしてみれば、これまでは富の大半は有形の資産から生まれていたが、今は次第に無形の資産の重要性が高まっているということだ。
製造業にとっても、如何に良い製品を低価格で作りたくさん売るかというよりも、新しい製品に消費者が求めるサービスを乗せてどう収入を得るかということがますます焦点になっている。
▲画像 デジタル化、ネットワーキング(イメージ) 出典:Pixabay; geralt
そうした経済のデジタル化は、金融仲介にも影響を与える。言うまでもなく日本の金融仲介の主力は銀行部門を通じるものだ。その銀行の与信においては、無形資産は扱いにくい。資金使途の評価においても、担保価値の評価においても、有形資産と比べ無形資産の価値が事前には良く分からないからだ。
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