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経済のデジタル化と金融仲介

Japan In-depth / 2019年8月3日 11時21分

加えて、新しいデジタル・サービスの供給においては、企業の成功・不成功の明暗がはっきりする。プラットフォーム・ビジネスなどはその典型だが、結局、勝者が大きなシェアをとってしまうので、多くの企業群が一定期間に亘って収入を得ていくというシナリオをなかなか描けない。新しいデジタル・サービスを生み出すための資金仲介はリスクが高いということだ。


そうなると必要な資金仲介は、銀行貸出のように元本保証のある預金とバランスする媒体ではなく、株式のように最悪の場合は無価値になってしまう媒体により依存することになる。新規ビジネスの資金調達において、ベンチャー・キャピタルのような株式を保有する主体が大きな役割を果たしているのにはそういう背景もある。


この様に考えると、経済のデジタル化が進行する下にあっては、銀行部門の金融仲介に影響を与えて景気変動を平準化しようとする金融政策は、次第にその効果が制約されていくことになる。増してや、経済の潜在成長力を浮揚するという、本来、金融政策では困難な政策目標の達成も、新規のデジタル・サービス等の立ち上げに本当に必要なのが銀行貸出ではないのであれば、なかなかできないということになる。


他方、株式投資の専門家の企業評価においては、株主への収益還元の度合いに対する目線は世界的にかなり高くなっている。それは一部の成功企業が、経済のデジタル化の急速な進行ということもあって、実際にこれまで非常に良い経営実績を残してきたからだろう。


しかし今日、欧米の好業績企業でさえ、株式市場で形成されてしまった高い要求水準を満たす投資案件をみつけることができず、自社株買いによって株価を引き上げる対応をしている。これは要するに自己資本を圧縮し、レバレッジを引き上げて企業価値を維持しているということであって、それは新しいデジタル・サービス等の創造には結び付かない。


日本においても、経済のデジタル化が進む下にあっては、これまでの主力であった預金-貸出という金融仲介だけではなく、場合によっては無価値になってしまう株式のような媒体を通じた金融仲介がより重要になるはずである。しかし、個人にしてみれば、一か八かの金融商品は預金のように信頼できる貯蓄手段にはならない。そこには、やはり大数の法則を働かせた保険的な機能を噛ませる必要がある。日本の金融機関の工夫のしどころではないか。


さらに、企業の株主還元に対する目線も、生き馬の目を抜く専門家間の競争と、引退後に備えた資産形成において、今の定期預金よりも少しでも高いリターンが得られればとても助かる個人とでは自ずと違う。


現在、5年ものの定期預金であっても、金利の小数第1位まではゼロである。アップ・ダウンはあっても長期的にそれに負けない利回りを生む株式投信によって、これからの新しいデジタル・サービス等の供給に資する金融仲介が実現できれば良いのである。そういう工夫の余地もないものだろうか。


トップ写真:IoT社会(イメージ) 出典:Pixabay; Tumisu


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