「再度の国民投票」不可避か 英ジョンソン新首相を占う(上)
Japan In-depth / 2019年8月6日 23時0分
▲写真 イギリス下院議場。下院議員の多くが「合意なき離脱」に反対している。 出典:Wikimedia Commons; UK Parliament
その一方で、最大野党の労働党は、これまでの「英国人の雇用を守るため、移民問題などでEUからよりよい条件を引き出す前提で、円満に離脱すべき」という穏健離脱派の立場から、EU残留へと舵を切った。
前述のハント元外相をはじめ、保守党内にも穏健離脱派は多いのだが、彼らは(悪く言えば)雇用の問題より、外国企業や投資マネーが一斉に英国から逃げ出す事態を恐れているように見受けられる。したがって彼らを「隠れ残留派」と見なす向きも多い。
いずれにせよ野党は、6月に行われた統一地方選挙で、親EU派とされる自民党や緑の党が躍進し、保守党・労働党ともに議席を大きく減らしたことへの反省から、「新政権は再度の国民投票を実施すべき」という姿勢を共有しつつある。これは労働党のジェレミー・コービン党首が実際に発したコメントである。とどのつまりジョンソン首相がどのような離脱案を示そうが(夏休み明けまでに具体案を示せればの話だが)、議会がこれを可決する見込みはゼロと言ってよい。
▲写真 ジェレミー・コービン英労働党党首 出典:Jeremy Corbyn facebook
EUの側はと言えば、前述のジョンソン首相の演説に対して、打てば響くように、「再度の交渉の余地などない」との見解を発表した。こうなると「強硬離脱内閣」としては、解散・総選挙に打って出ざるを得ないだろう。
もうひとつの選択肢としては、議会を強引に停会に追い込む(制度上は可能である)ことだが、そんな無茶をすれば内外から総スカンを食らうのみならず、議員の側にも首相罷免決議という伝家の宝刀がある。現実問題として総選挙以外は考えにくい。
かつては日本と同様、首相に解散権があったのだが、保守党キャメロン内閣が「2011年議会任期固定法」を成立させて以降、「内閣不信任案が可決、もしくは議員の3分の2が解散に賛成した場合を除き、議員の任期を5年間とする」という制度に代わっている。ただし逆に言えば、議員の3分の2が賛成すれば解散・総選挙が可能になるわけで、前述のように与野党の別なく「合意なき離脱」には反対多数である現状に照らしたなら、今次に限ってハードルはさほど高くない。
その場合、選挙の争点は「強硬離脱か、離脱撤回=残留か」に絞られる。言い換えれば再度の国民投票と同じことになるわけだ。議会の停会と同様、再度の国民投票実施をごり押しすれば、いくらなんでも民主主義の原則にもとる、として総スカンを食うことは目に見えている。
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