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フランス、脱階層社会の試み 下

Japan In-depth / 2019年8月8日 7時0分

CLISを設置するかは、学校の規模によるので全ての学校に存在するわけでもなく、少し遠方から通うお子さんたちもいる。そのため、そういった子供たちを送り迎えする人もいるわけだ。子供を迎えに学校の外で待っていると、CLISの子供たちがニコニコしながら送迎の車の方に向かっていく光景がよく見られた。


そんなある日、事件が起こった。なんと、学校から出てくる障がいのある子供たちに対して怒鳴り声をあげる親が現れたのである。その親に対し、迎えにきていた運転手の女性が対抗すると、今度は女性を侮辱する言葉で応酬してきた。どうも、障がい児が在籍するクラスが学校の中にあることに反対する親の一人だったようだ。結局その日はなんとか収まりそのまま帰って行ったが、次の日、二人の上司を連れた運転手と学校の校長先生を交えた話し合いが持たれ、最終的には暴言をはいた親が訴えられると言う形で終わった。


ハッキリ言って、まず、障がい児が学校に来ることに暴言をはく理由がまったく理解できず、目の前に繰り広げられた光景に大きな衝撃を受けたものだ。分離が長らく続いたフランス社会には、いまだ障がいがある人々に対する差別があるのは事実なのだ。そんな状況の中、障がい者がこの社会の中で共存して生きていくためには、自分のことを理解してもらう必要がある。そうしなければ生きていけない。いかに他者とつながりをつけていくか、そのために自らの障がいをアピールすることも必要であり、学校内に存在し、誰もが身近に感じ、その状態が日常の一つと認識することが大切なのだろうと、あらためて思う。


現在では、インクルーシブ教育(障がいのある者とない者がともに学ぶことを通して、共生社会の実現に貢献しようという考え方)が2005年から始まり、障がい児用のクラスが学校内に設置されているだけではなく、障がいがある子供が、同世代の障がいがない仲間たちと隣同士で学習する取り組みも行われている。子供たちが通う中学校でもその取り組みは行われていて、各障がい児の能力にあわせたカリキュラムに沿って一部の授業を同じ教室で勉強している。一緒に生活していく上で発生する問題やその解決法をともに共有していることは子供たちから聞く話から時折伝わってくるが、その内容からも、分離されていた時代とはまた違う考え方を持つ世代が確実に育っていることが読み取れるのだ。


性別、宗教的、人種、移民、貧困層、特別な支援を必要とする人たちなど、世の中には普通に存在する。もちろん、メリットもデメリットもあることは間違ないのだが、共存するためにはお互いを知ることが必要であり、そのためには可能な限り分離しないで、身近にいることが重要になってくる。特に、いろんな世界を身近な存在として感じながら学校生活を送ることは、多様な背景を持つ他者に対する理解力を高めることにもつながる。それは円滑な人間関係が構築される環境を生み出す結果を生み出していくのだ。


多様な人々が混ざり合い、一見、混沌(こんとん)とした世界が広がっているようにも見える現代のフランスではあるが、そのフランスを通して、あたらめて「混ぜる」ことの大切さについて再認識させられるのである。


(上 はこちら。全2回)


トップ写真:イメージ 出典:Flickre:woodleywonderworks


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