1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

統一通貨ユーロが持つ意味(上)今さら人に聞けないブレグジットその7

Japan In-depth / 2019年8月8日 18時0分

結果はご承知の通りで、博士の予測は外れ、ユーロは実際に導入された。


まずは銀行決済などの、まるで仮想通貨の先駆けのような形で、そして、2002年1月1日より、統一通貨への加盟を決めていた12カ国(EU加盟国のうち、英国などは不参加)にて、一斉に通貨の切り替えが行われた。


わが国でも過去、紙幣のデザインは幾度か変わっているし(近くまた変わる)、敗戦直後には悪性インフレを脱するため、預金封鎖と新通貨導入という荒療治が行われたこともある


世に言う新円切り替えだが、12もの国において一斉に通貨を切り替えようという試みは、世界の歴史に照らしても未曾有の試みと言ってよかった。


当座の現金だけで、およそ6000兆ユーロを準備する必要があったが、具体的には、145億枚の紙幣と、310億枚の貨幣が必要とされたのである。


輸送の規模に加え、強奪される危険性も考慮して、どこの国でも軍隊が動員された。装甲兵員輸送車が臨時の現金輸送車となり、武装した憲兵に護衛される形で、銀行や商店に新通貨が配られていったわけだが、実際、これは第二次世界大戦以降、最大規模の輸送作戦と称された。


交換の方法は、日常生活の中で普通に行う、というアイデアが採用された。これまた具体的に言うなら、たとえばドイツの商店では、マルクで買い物をしてもおつりはユーロで、という風になり、銀行ATMからはユーロでしか引き出せないようになったわけだ。



▲写真 500ユーロ紙幣 出典:flickr; Peter Linke


案ずるより産むが易し、という格言の通り、新通貨の登場から1週間も経たないうちに、加盟国内での流通率は96パーセントを超えたという。


色々なことが言い得るが、独自通貨を発行することは国家の独立の象徴だというのは、壮大なフィクションに過ぎなかったのだと、私は考える。


そもそも歴史的なことを言えば、イタリアではミケランジェロの時代からリラという通貨が使われてきたし、ギリシャのドラクマに至っては、5000年の歴史を持つ世界最古の通貨である。それでも彼らはユーロを選択した。


その理由は、ユーロの方が信用があり、便利だからである。お金=通貨には所詮、お金であるという以上の意味はない。自分の欲しい物と交換できれば、それでよいのだ。


ユーロのどこがそれほど便利なのかは、次稿で。


トップ写真:ユーロ記号のオブジェ 出典:flickr; Christine und Hagen Graf


この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください