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補助金の概念崩す「SIB」

Japan In-depth / 2019年8月10日 23時0分

補助金の概念崩す「SIB」


出町譲(経済ジャーナリスト・作家、テレビ朝日報道局勤務)


「出町譲の現場発!ニッポン再興」


【まとめ】


・東近江市は市民参加型の「せっけん運動」に取り組んでいる。


・行政事業をNPO法人に委ねるソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)を活用。


・SIBにより地域の課題に対し、市民の当事者意識が生まれる。


 


【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されないことがあります。その場合はJapan In-depthのサイトhttps://japan-indepth.jp/?p=47322でお読みください。】


 


お役所仕事と言えば、「前例踏襲」と「縦割り」という2つのキーワードがあげられる。役所の中にいて法律や条例とにらめっこしながら、外にでない。そんな公務員は多かった。人口が増え、経済成長する時はそれでよかった。


しかし、今や人口が減少する時代に突入した。従来のやり方とは全く違う手法を取り続けなければならない。地域に飛び出し、住民の声をもっと聞く必要がある。私は最近、それを痛感している。ある公務員との出会いがきっかけだ。


レストランで一緒にランチを食べていると、次々に声をかけられる。そのたびに笑顔で応じる。地域住民に溶け込む姿は公務員には見えない。近所のお姉さんのようだ。滋賀県・東近江市役所の山口美知子である。山口は私と話している最中に、窓の外の田園風景を見ながら、目を輝かせた。「私は市役所から地域住民を見る行政はしたくありません。こうして地域住民と話し、そこから見た行政を行いたいのです」。


山口は現場を歩きまわり、課題を吸収して公務員として動く。「行政の施策はスポットライトのようなもの。光が当たるところは明るいけれども、その周辺は暗いのです。支援は届かないところも少なくありません。地域の人と一緒になって、まちづくりをするしかないのです」。


その山口が私を案内してくれたのは、「あいとうエコプラザ菜の花館」だった。廃食油を回収しリサイクルして使用する拠点だ。ここで粉せっけんができる。


粉せっけんを作ったのは、1981年からだった。きっかけとなったのは、77年に琵琶湖に大量発生した赤潮だった。赤潮の原因は合成洗剤に含まれるリンだった。そこで、滋賀県で合成洗剤の使用をやめる「せっけん運動」が広まった。


その後、食器洗いや洗濯などに使う粉せっけん作りが始まった。てんぷら油などを回収して作るリサイクル粉せっけんだ。循環型の東近江市のシンボルのような存在となっている。その建物を運営しているのは、NPO法人「愛のまちエコ倶楽部」だ。事務局長の園田由未子は「お母さんたちは時給300円ほどでせっけんを作ってきました。ほとんどボランティアです。資源回収で集まったペットボトルなどに入れた素朴な商品。琵琶湖への愛があふれた活動ですが、それには限界があります。次世代につなげるためにもちゃんと賃金を払える仕事づくりが目標となりました。お金が回って、持続可能な仕組みが必要なのです」と説明した。


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