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統一通貨ユーロが持つ意味(下)今さら聞けないブレグジット その8

Japan In-depth / 2019年8月12日 0時0分

イタリアやスペインなど,通貨の信用度が低かった国は、強い通貨を手に入れてインフレを抑制できたりもした。もっともこの結果、国内での経済格差が拡大し、放漫財政の問題がクローズアップされ、ユーロ危機となるのだが。


いずれにせよ、今はブレグジットで揺れている英国でも、ユーロがまだ堅調だった頃、とりわけ2008年に起きた、世に言うリーマン・ショックの直後には、ドルもポンドも先行き不安だとして、加入論がかなり盛り上がったのである。その後、2010年代に入って,ギリシャ危機などが喧伝されたため、「加入しなくて正解だった」 という声が多数派となったわけだが。



▲写真 イギリスのポンド紙幣。どの額面の紙幣にも女王の肖像画が描かれている。ユーロ導入なら肖像画は消えていた。出典:BANK OF ENGLAND


それはそれとして、2002年1月1日から現金の流通が始まったユーロが,たちまち定着した理由を考えてみよう。と言っても話は簡単で、便利な通貨だから浸透したのである。


EU圏内での決済通貨として、この上なく便利であることはすでに述べたが、一般市民にとっても、使いやすい通貨であった。デザインひとつとっても、複数の国で使われることを前提に、なかなかよく考えられている。


まず、肖像画が描かれていない。多くの国で紙幣のデザインに肖像画が用いられるのは、偽造を困難たらしめるためであるが、ヨーロッパの歴史を考えると、これは無理なのだ。イタリアやスペインの人々が、ナポレオンの肖像画を描いた紙幣など使う気になるものかどうか、少し考えただけで分かる。


実を言うとデザインを検討する過程では、「シェイクスピアやモーツァルトといった、普遍的な人気のある芸術家ならばどうか」という意見も聞かれたらしいが、結局採用されなかった。


これもよく知られる通り、ヨーロッパの財界にはユダヤ系も多いので、あの『ベニスの商人』の作者では具合が悪いし、モーツァルトがイタリアのオペラをこきおろしたことは結構有名なのだ。『アマデウス』という映画に、よく描かれている。


最終的に、オーストリア国立銀行のデザイナーであったロベルト・カリーナという人物が行き着いたのは、「ヨーロッパの各時代を象徴する、しかしながら実在しない建物のデザイン」というアイデアだった。



▲写真 ユーロ紙幣 出典:Wikimedia Commons; Andrew Netzler


ユーロ紙幣は5,10,20,50,100,200,500の7種類が発行されているが、額面の小さい方から順に、5ユーロ紙幣はギリシャ・ローマ時代、10ユーロ紙幣はロマネスク様式、20ユーロ紙幣はゴシック様式、50ユーロ紙幣はルネサンス様式、100ユーロ紙幣はバロック・ロココ様式、200ユーロ紙幣はアールヌーボー、そして500ユーロ紙幣が現代建築となっている。


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