公共施設、初のマイナス入札
Japan In-depth / 2019年8月15日 18時0分
出町譲(経済ジャーナリスト・作家、テレビ朝日報道局勤務)
「出町譲の現場発!ニッポン再興」
【まとめ】
・経済成長期の公共施設の老朽化が進んでいる。
・埼玉県深谷市の全国で初めて公共施設がマイナス入札。
・マイナス入札後、どう利用するかで自治体として得につながる。
【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て見れないことがあります。その場合はJapan In-depthのサイトhttps://japan-indepth.jp/?p=47419でご覧ください。】
私は帰省するたびに、愕然とする建物がある。近所にある市民会館である。老朽化のため休止され、放置されている。地元紙の報道によれば、財政難もあって耐震化工事を中止し、そのままになっている。解体するにしても、巨額の費用がかかるに違いない。幼いころ親しんだ建物だけに、日に日に朽ちていく姿は忍びない。
老朽化した公共施設をどうするか。それは、全国の自治体に突き付けられた課題である。
高度経済成長のころに建てられた施設は今、一斉に老朽化している。解体し、新たな建物を建てるのは巨額の費用がかかる。ただ、放置していても、維持管理費を出さなければならない。
そんな中、埼玉県深谷市の動きに注目が集まっている。全国で初めて「マイナス入札」を成立させたからだ。公共施設の跡地を譲渡する際、お金をもらうのではなく、業者に支払うという。いったいどんな仕組みなのか。
今回マイナス入札の対象となったのは、旧小学校の体育館の施設と敷地だった。2018年12月に行われた入札では、予定価格はマイナス1340万6000円に設定された。そして、最も少ない金額、マイナス795万円で落札された。
市は業者に795万円支払うわけだが、決して損をしないとみている。その理由はマイナス入札には、条件があるからだ。落札した業者は自分で建物を解体しなければならない。
「公共施設は、自治体が解体し、更地にして売却するというのが一般的だ。こうしたやり方においても、自治体が解体費を負担している。このため、解体費が土地の売却額を上回る場合、実質的には、マイナスとなる」(公共施設改革推進室 大野忠憲室長補佐)。
マイナス入札とは、入札を見える化した形といえよう。大野氏によれば、さらに大事なポイントは、スピード感だ。市が解体する場合、解体業者の入札など手続きを踏むため、それだけでも1年ほどかかる。
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