中国の弱点であり続ける香港
Japan In-depth / 2019年8月20日 18時0分
▲写真 香港デモ 出典:Wikimedia Commons; Jonashtand
言い換えれば、中国共産党の統治の正統性が害されれば中国は容赦しない、というか、嫌でも徹底的に弾圧せざるを得ない、というのが実態に近いだろう。流血の事態にでもなれば第二の「天安門事件」だから、良くて対中経済制裁、下手をすれば騒動が中国本土にまで波及する可能性すらある。中国は今頃本当に困っているはずだ。
アメリカのCIAがデモの背後にいるのは本当か、ともよく聞かれるが、恐らくフェイクニュースだ。そもそも米国の外交官がデモ隊と接触するのは当たり前、彼らがCIAの秘密工作員であるはずはない。大使館にいるCIA関係者はあくまで「表」の人々、「裏」の工作員はそんなところに「のこのこ」出ては来ない。それくらい常識だろう。
CIA関与説は中国の常套句。今中国に必要なのは、「外国勢力に扇動された香港の一部の過激派が暴徒となって香港の社会秩序を破壊している」からこそ、中国は「武警を投入せざるを得なかった」という説明(narrative)だ。CIAが全く無関与とは思わないが、世界にはデモ隊を支援する人権擁護派NGOなど無数にあるのだから。
そう考えれば、深圳での武警訓練はTV映像による対デモ隊抑止の行為。中国は本当は「やりたくない」。「やりたくない」からこそ、ああやって何度もデモ隊を威嚇するビデオを流させるのだ。繰り返すが、今の中国には、デモを「放置」しても、「介入」しても、「地獄」しかないのだ。やはり当面、香港は中国の「弱点」であり続けるのだろう。
〇 アジア
香港では反政府デモが長期化しているが、先週は台湾を巡り大きな動きがあった。トランプ政権が台湾にF-16Vと呼ばれる戦闘機を売却するらしい。F-16Vは最新鋭の第五世代戦闘機ではないが、現有の、1990年代に売却された、古いF-16よりは格段に能力の高い戦闘機だ。当然、中国は猛反発している。
今回のF-16V売却でも、中国人民解放軍空軍の対台湾空軍の戦術的優位は変わらないだろう。中国にとってより重要なことは、現在の米国が(台湾関係法という米国内法でのみ担保されている)台湾への防衛義務を再確認し、それをより実質的なものに戻そうとしている可能性があることだ。タイミング的にも「米国は良くやるよ」と思う。
▲写真 2018年アジア防衛安全保障会議(ADAS)展示会で展示されたF-16Vバイパー戦闘機のスケールモデル 出典:Wikimedia Commons; Rhk111
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