ニセコ沸騰のきっかけとは
Japan In-depth / 2019年8月26日 7時0分
出町譲(経済ジャーナリスト・作家、テレビ朝日報道局勤務)
「出町譲の現場発!ニッポン再興」
【まとめ】
・ニセコ沸騰のきっかけはラフティング。
・ニセコは物価も賃金も上昇『ニセコノミクス』実現。
・長期滞在の外国人を魅了する街づくりが経済効果を生む。
【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て見ることができません。その場合はJapan In-depthのサイトhttps://japan-indepth.jp/?p=47600でお読み下さい。】
新幹線が開通すれば、観光客が増え、地域が潤う。そんなストーリーを描き、新幹線に熱い期待を寄せている地方は多い。
しかし、私は過度に期待しない方がいいと考える。新幹線開通後も、期待ほど潤わない地方は少なくない。ストロー現象で、都会に人が流出するだけではない。新幹線開通に備え、大型公共事業を行い、挙句の果てに、財政危機に陥るケースもある。大事なのは、新幹線より、地道にまちの魅力を高めることだと思う。
私は北海道のニセコを訪れ、それを痛感した。千歳空港から車で2時間もかかり、不便極まりない。しかし、外国人が殺到する。その中心、倶知安町(くっちゃんちょう)では1億円を超える高級コンドミニアムが瞬時に完売する。ある調査地点では、住宅地、商業地ともに前年比5割以上値上がりしている。上昇率は5年連続で全国1位を誇る。ニセコ沸騰の立役者の一人は、オーストラリア人、ロス・フィンドレーだ。
▲写真 ロス・フィンドレー氏 出典:著者提供
フィンドレーはバブル期にスキーのインストラクターとして来日した。当初はスキーブームで潤っていた倶知安町だったが、ブームが去った後、閑古鳥が鳴いていた。そこで目を付けたのは、ラフティングだ。7、8人ぐらいが大きなゴムボートに乗って、清流を川下りする。
「ニセコは、夏場はこれといってやることがない。手持ち無沙汰になる観光客も多い。そのため、人の動きもパタリと止まる」。100万円貯めたお金で会社を起こした。
「最初の年は200人が目標でした。口コミでどんどん広まり、その年いきなり、1500人が利用してくれた。それから、テレビタレントなどが取材し、ニセコのラフティングは盛り上がったのです」。いまでは年間およそ3万人が、ラフティングツアーを体験している。ニセコの夏の代名詞ともなっている。冬場だけの観光地が、様変わりした。具体的な数字になって表れている。倶知安町の隣、ニセコ町の夏の観光客数は今や、冬を上回る。現在、160万人程度で推移している。
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