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夢をつないだ北海道夕張市長

Japan In-depth / 2019年8月29日 19時52分

夢をつないだ北海道夕張市長


出町譲(経済ジャーナリスト・作家、テレビ朝日報道局勤務)


「出町譲の現場発!ニッポン再興」


【まとめ】


・鈴木直道元夕張市長の最大の仕事は353億円もの借金返済。


・自腹を切ったトップセールスは「地域再生」事業も可能に。


・夢を語るリーダーは子供たちにも夢をつなぐ。


 


【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されないことがあります。その場合は、Japan In-depthのサイトhttps://japan-indepth.jp/?p=47665でお読みください。】


 


ちょうど1年前、私は北海道の夕張市を訪れた。目的は市長だった鈴木直道に会うためだ。破たんした自治体で、若き市長がどのように奮闘したのか。それを取材する旅だった。夕飯を共にした際、北海道知事出馬のうわさを質したが、軽く笑っていなされただけだった。それ以上は追及しなかった。鈴木は知事選で圧勝して、今や、北海道知事。私は、記者としての突っ込みが甘かったことを反省している。


北海道夕張市が破綻したのは12年前だ。それ以降、極限までの行政サービスの削減に追い込まれている。かつて6校だった小学校は1校しかない。子どもたちは凍(い)てつく寒さの中、長時間バスに揺られる。破綻当初は、最低の行政サービスで、全国最高の市民負担と揶揄(やゆ)された。ピーク時に12万人近くだった人口は今や8千人だ。



▲写真 廃墟となった夕張めろん城 出典:著者提供


鈴木直道は2011年に市長に就任した。もともと東京都の職員だったが、夕張市に派遣された。それが縁で出馬したわけだが、市長の仕事は壮絶なものだった。破綻した時の借金は353億円。鈴木にとって借金返済が最大の仕事となる。市税収入は年間8億円なのに、財政再生計画では、26億円返さなければならない。それが20年ほど続く。


「当初、行政サービスは、命にかかわること以外は全て削らなければならなかった。夕張市民が負担に耐えられるかどうかという視点はなかった」


図書館や市民会館は閉鎖した。市の補助金も次々に打ち切る。老朽化した市民住宅を修繕するお金もない。税金や下水道代は大幅に引き上げられた。若い人は嫌気を差し、夕張市を離れた。残されたのは、高齢者ばかりだ。高齢化率は、破綻前の35%から50%に上昇した。市の職員の給与は4割カットされた。鈴木の市長としての年収は250万円だ。痛みを伴う政策を実現するには、とにかく重要なのは、住民との対話だ。5人以上が申し込めば、市長が年中無休で出向く制度を設けた。


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