離脱派が伸長した理由・政治家編 今さら聞けないブレグジット 最終回
Japan In-depth / 2019年9月3日 11時24分
さて、本題。
ヨーロッパ統合の大まかな流れについては、本シリーズで振り返ってきたわけだが、英国はこの動きに対して距離を置くべきだ、との主張は、もともと労働党左派やその支持層に人気があった。理由は単一ではない。
まず、1950年代に当時のEECを牽引していたのは、労働党左派から見れば保守反動の権化のようなシャルル・ドゴールであったし、こうした経済ブロックに組み込まれることで、労働組合運動にタガをはめられることを嫌ったのである。もともと英国労働党は、労働組合運動の政治部門として組織されたという歴史を持つくらいなもので、日本の旧社会党以上に労組の規定力が強かった。したがって、移民労働者の増加は,労働者階級の英国人にとっては賃金抑制圧力になるとして歓迎できなかった。
この当時、左派の若手党員だったジェレミー・コービンという政治家は、EECについて、「重商主義的で英国の労働者の利益に合致せず、第三世界から露骨に搾取するなど、倫理的にも正しくない」という理由で、加盟反対を強硬に訴えていた。現在、彼は労働党の党首だが、前述のように、もともとは穏健な離脱を主張していたものが、最近は離脱反対派に転向している。転向したと言うより、保守党との差別化を図る方便だと思われるが、いずれにしても案外いい加減なものだと言わざるを得ない。
▲写真 ジェレミー・コービン労働党党首 出典:Jeremy Corbyn facebook
保守党はと言えば、統合された巨大市場の誕生を、指をくわえて見ているわけにもいかないという立場から、ド・ゴールに一度は「ノン」と突っぱねられる屈辱に耐えてまで、EEC加盟を果たした。
ところが、1989年から94年まで、英紙『デイリー・テレグラフ』のブリュッセル特派員であった一人のジャーナリストが、EC(当時)の行き方は、「英国の伝統的な議会制民主主義とは相容れない」という論陣を張り、ついには保守党内に欧州懐疑派と呼ばれる勢力を生み出すまでになるのである。この欧州懐疑派の代表的な人物がマーガレット・サッチャー元首相で、彼女にまで影響を与えたとされるジャーナリストは、その名をボリス・ジョンソンという。
▲写真 バミューダ諸島の軍を観閲するマーガレット・サッチャー元英首相(1990年4月12日) 出典:Margaret Thatcher FOUNDATION (Public domain)
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