離脱派が伸長した理由・政治家編 今さら聞けないブレグジット 最終回
Japan In-depth / 2019年9月3日 11時24分
言うまでもなく現在の英国首相だが、もともと労働党左派の専売特許のような趣さえあった反ヨーロッパ統合思想を、保守派の間で人気のあるものにした一連の記事は、「ジャーナリストとしてのジョンソンの唯一の功績」であると言ってはばからない人も多い。
ずいぶんな言われ方だが、そもそも彼はオックスフォード大学を出て投資コンサルティング会社に入社したのだが、仕事が退屈だと言ってすぐに辞めてしまっている。そして『タイムズ』紙に就職したわけだが、これは著名なジャーナリストで欧州議会の議員でもあった父親のコネであったと言われている。
その『タイムズ』は、考古学者のコメントをねつ造したことがばれて解雇された。『デイリー・テレグラフ』退社後は、政治コラムニストとして独立したが、今度は黒人や同性愛者をバカにする文章を書いて「炎上」したり(当時はまだネット社会ではなかったが)、女性編集者との不倫スキャンダルがあったりと、とにかくジャーナリストとしての行状は、とても誉められたものではなかったのである。
こうしたことが関係しているのかどうか、保守党も決してブレグジット一色ではない。むしろ前述のように〈合意なき離脱〉だけは避けるべきだと考える人が圧倒的に多く、ジョンソン氏も一度は党首選から撤退せざるを得ず、穏健派のメイ前首相が担ぎ出された。彼女は言わば、火中の栗を拾う役割を押しつけられ、そして案の定、拾うことができなかったのである。このこともすでに述べた。
▲写真 就任後、首相官邸に入るボリス・ジョンソン英首相(2019年7月25日) 出典:Prime Minister facebook
こうした経緯でもって、ジョンソン新首相が誕生し、保守党支持層の間では、もはや〈合意なき離脱〉も辞さないとする強硬論が強まっているようにも見えるのだが、私自身は「五分五分よりもやや高い確率で、離脱撤回・ジョンソン辞任となるのではないか」との観測を撤回する気にはなれない。
ブレグジットを強行することにより、英国経済に与える大いなるダメージについても、アイルランドの国境問題についても、「備えはできている」「私が全責任を持つ」などと大見得を切るばかりで、具体策がなにも示されないし、そもそもこの人の言説は、あまり信用する気になれないからである。
トップ写真:ボリス・ジョンソン英首相(2019年8月6日) 出典:Boris Johnson facebook
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