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陸自水際障害処理、要再検討

Japan In-depth / 2019年9月4日 13時4分

 


■ 威力不足


しかし、導爆索による水際障害処理はうまくいかない。


第1の理由は威力不足である。導爆索の爆薬量は比較的少ない。対して機雷や地雷は爆発衝撃に強い。そのため効果を発揮し難い。



▲図 導爆索 出典:「水際障害処理装置(地雷原処理装置)-運用構想(イメージ)」『平成29年度 事前の事業評価 評価書一覧』を防衛省WEBから入手。


単独の爆薬包威力からすれば、有効処分幅は3m程度である。米MICLICの炸薬量と現用機雷の例で推測すれば、導爆索から1.5m以内の機雷を機能不全にできる程度だ。なお誘爆はまず起きない。(*3)


もちろん導爆索では連結による合成効果も期待できる。MICLICの場合は単薬包を1400ヶ連結し索長106mを構成している。仮に1.5m分、20ヶの威力がうまく合成されれば有効距離は7mに増える。


だが、その際には水深要素も検討する必要がある。導爆索の威力は水深を超えない。水深3mなら威力半径は3mを超えると効果は急減する。威力は海面から上空に抜けてしまうのだ。


まずは水際機雷や地雷の無力化には向いていないのである。


 


■ 作業性不良


第2の理由は作業効率の不良だ。幅500mから2kmの水際障害を有効幅3mの導爆索で処理するため非効率となる。


水際障害は海岸線に沿って広く展開する。敵が上陸する、あるいは敵上陸に好適と推測される海岸線にはすべて設置しようとされる。その総延長は5kmや10kmに及ぶ。


導爆索を用いて縦目に処理するのは効率が悪い。幅広の障害を有効幅3mでちまちま処分する形だからだ。


当然、柄多数次の投射と爆破が必要となる。仮に上陸幅をほぼ最低の幅500mとしよう。それでも処分にはオーバーラップ無しでも投射が160回必要となるのだ。


実際には投射距離の相性も悪い。障害の濃密部分を処理するには長めである。だが広域処理するには短い。


水際障害には濃淡がある。高密度部分は感潮帯から波打ち際である。作業員が立ち入って敷設できる範囲だ。それを処分するには導爆索の投射距離100mは長い。


だが水深12mから陸上の傾斜変化点までカバーするには短い。その際には奥行方向にも数度の投射が必要ともなる。


導爆索による処分は作業性も不良なのだ。



▲写真 MICLIC処理 出典:米海軍写真(撮影:Brian A. Kinney)


 


■ 除去範囲不明瞭


第3の理由は除去範囲の不明瞭である。


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