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陸自水際障害処理、要再検討

Japan In-depth / 2019年9月4日 13時4分

そもそも、導爆索による水際障害処分では除去範囲を把握できない。


陸上なら明瞭である。処理面は凹面に抉れる。その上は一応の安全範囲と見なせる。車両も人員もその上を通ればよい。


だが海上ではわからない。舟艇から海底は見え難いからだ。しかも敵前上陸では船首に立って真下を透視する余裕もない。特に水陸両用装甲車は視界が狭い。通常時でも海底透視は不可能である。


その上、海面に未処理面が残る。


導爆索は正確に飛ばない。発射時の方向誤差や横風の影響を受ける。もともと無誘導かつ飛翔不安定のため正確にも飛ばせない。


全面処理を試みても未処理面が残るのだ。有効幅3mの導爆索で160回投射しても上陸海岸前面は処分しつくせない。それぞれの導爆索はバラバラに斜行する。その分、重複部分と空白部分が生じるのである。


そして、その場所がわからない。舟艇側は海底が処理済みかどうかを把握できない。


これも水際障害処理に導爆索が向かない理由である。(*4)



▲図 曳航導爆索 出典:著者作成


 


■ 米国は無人機・ヘリ処分を模索


陸自の水際障害処理はうまくいかない。その理由は以上のとおりである。


付け加えれば米国もそのように判断している。湾岸戦争における上陸戦失敗の結果、導爆索は障害処分の決め手とはみなされなくなった。以降は無人機やヘリ、一時期はホバークラフトによる処分が模索されている。


つまり国産新型導爆索の開発はいまさらだということだ。先行事例を真面目に検討した結果ではない。


本来なら無人機やヘリによる処分が模索されるべきである。無人航空機(UAV)やヘリによる上空からの透視捜索と銃撃・爆撃処分である。導爆索を使うにしても無人航空機や無人水上機(USV)、ヘリによる横引き、海岸線への並行展開と爆破といった手法である。


 


*1 水際障害・水際機雷は撃針や砲側と同じように海陸で読みが異なる。日本海軍と海自では「みずぎわ」と訓読し、陸軍と陸自は「すいさい」と音読する。


*2 『平成29年度 政策評価書(事前の事業評価)』によれば開発する器材は50年前に開発された米軍器材M58/M59 MICLICそのものだ。それをわざわざ35億円かけて再開発する形である。


*3 スウェーデン製機雷ROCKANと米導爆索MICLICの関係ではその程度となる。スウェーデン製ROCKANは炸薬量105kgであり最低敷設距離25mである。つまり爆薬105kgの水中爆発に距離25mで耐える。対してMICLICの爆薬包炸薬量は560gである。球面拡散で計算すればROCKANは距離1.6mまで耐える。MICLICはそれ以内の距離の機雷しか無効化できない。なお実際にはMICLICの爆薬は平凡なC-4である。ROCKAN等が用いる水雷用炸薬と比較して性能で劣る。


*4 各国導爆索との比較や地雷への効果不良、誘爆は発生しない見通しといった仔細は筆者記事で示している。文谷数重「『導爆索』で水際障害の処理は可能か?」『軍事研究』640(JMR,2019.7)pp.218-229.


トップ写真:MICLIC 出典:米陸軍写真(撮影:Genesis Gomez)


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