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私のパフォーマンス理論 vol.34 -筋力トレーニングについて-

Japan In-depth / 2019年9月11日 7時0分

私のパフォーマンス理論 vol.34 -筋力トレーニングについて-


為末大 スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役


【まとめ】


・筋力トレーニングは与えた刺激に対して抵抗しようとする力を応用している。


・筋力トレーニングの狙いは、必要な筋肉を刺激することと限界値を上げること。


・自分の走りのどの部分をどう改善したいのか考えるきっかけとなる。


 


陸上競技は筋力トレーニングが全体のトレーニング比率の3-4割になる。もっと多い人もいるぐらいだろう。筋力トレーニングとウエイトトレーニングは厳密に分けられない。私は少なくともわけていなくて、基礎的なウエイトトレーニングは王道のもの(ベンチ、スクワット、デッドリフト、スナッチ、パワーリフト)を行い重さと動きの正確性を追求し、筋力トレーニングはその都度与えたい刺激を狙える動きと負荷を探っていた。変えないウエイトと、臨機応変に変える筋力トレーニングという感じだろうか。


筋力トレーニングにかかわらず、トレーニングの原則は与えた刺激に対し適応しようとする力を応用することだ。重たいものを持てば重たいものが持てるように適応し、長い距離を走れば長い距離が走れるように適応する。筋力トレーニングはある程度狙いたい箇所を狙ってそこに刺激を入れて、適応させることを目的としている。これは裏を返せば、どのような動きをしたいのかどこを鍛えたいのかが明確だからできることでもあって、筋力トレーニングをうまくやるためには、自分の走りでどの部分をどうしたいのかがある程度わかっていなければならない。


なぜただ走るだけでは、競技をやるだけではダメなのか。理由は二つある。一つは競技は複雑な身体を扱うので、例えば地面を踏むという行為一つでも、腹圧を高めて踏むやり方もあれば、ひざ下のふくらはぎを使って足首関節を強く使って踏むというやり方もある。前者が理想だが、後者の力の使い方でも一応踏む行為は成り立つ。そして最初のうちはこの違いが本人にもよくわからない。このように、実際に競技に必要な動きはできていても、内側の筋肉の稼働を見ると本当に動いて欲しい筋肉が稼働していないことがよくある。筋力トレーニングはこの本来必要な筋肉に刺激を入れるために行うというのが一つ目。


もう一つは限界値を引き上げるためだ。人間は最初は重たいものを持ち上げられないが、それは筋力が弱いということだけではなく、本気で力を出すという感覚がわからないからでもある。実際の競技の最中も、よほどうまくなければ力が出しきれていない。中高生が練習で何本も走れるので練習時間が長くなりがちだが、それは若くて回復をするという側面もあるが、そもそも技能レベルが低いので力が出しきれていないという面もある。主な筋肉はウエイトトレーニングでこの力の入れ方を学んだが、意識しにくい細部の筋肉は筋力トレーニングで感覚をつかんでいくほうがやりやすかった。


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