全世代型社会保障の議論開始
Japan In-depth / 2019年9月27日 18時0分
八木澤徹(日刊工業新聞 編集委員兼論説委員)
【まとめ】
・新しい社会保障制度を検討する「全世代型社会保障検討会議」発足。
・経済成長と財政の均衡を実現できるかが主な争点。
・労働側関係者は不在に、メンバー構成に不満の声も。
子供から高齢者まで、全ての世代が安心できる令和の時代の新しい社会保障制度のあり方を構想していく。政府は9月20日、社会保障制度改革の司令塔となる「全世代型社会保障検討会議」(議長・安倍晋三首相)の初会合を首相官邸で開いた。
検討会議は「団塊の世代」が75歳以上となる2022年以降も見据え、働く意欲のある高齢者が社会保障の「支え手」になれるよう70歳まで働ける制度を設けることや、年金受給開始年齢を70歳超まで拡大させることなどを議論する。
また、社会保障財政の悪化を食い止めるため、年金給付の見直しや後期高齢者の医療費、介護サービス利用者負担を現行の1割から2割に引き上げるなど負担増のあり方も検討する。
政府は検討会議の報告を踏まえ、年金と介護、70歳までの就業確保について来年の通常国会に関連法案を提出する考えだ。具体案は厚生労働省の社会保障審議会などで詰めるが、検討会議は各審議会の議論と平行して制度改正に向けた大きな方向性を示すという。
ただ、気になるのが検討会議と他の審議会とのバランスだ。「(社会保障審議会など)既存の審議会の存在を無視するのか」という声もある。
検討会議のメンバーは首相と議長代理を務める西村康稔経済再生・全世代型社会保障担当相のほか、麻生太郎副総理兼財務相、加藤勝信厚労相兼働き方改革担当相などの関係閣僚の他、社会保障に関する政府の会議に所属する民間有識者の計16人で構成する。
有識者の構成を見ると今後の議論の方向性が見えてくる。中西宏明経団連会長、新浪剛史サントリーホールディングス社長、柳川範之東京大学大学院教授の3人は経済財政諮問会議のメンバー。翁百合日本総合研究所理事長、桜田謙悟同友会代表幹事、そして中西氏の3人は政府の未来投資会議のメンバーだ。両会議に所属する財界代表の経団連、そして同友会は消費税引き上げなど政府寄りの提言を行い、働き方改革などで企業経営を擁護してきた。
さらに、議長代理の西村氏は経済財政諮問会議の進行役と未来投資会議の副議長を兼務する。年金のマクロ経済スライドによる給付の削減と受給年齢の繰り下げ受給を主張する社会保障制度改革推進会議の議長を務める清家篤前慶応義塾塾長もメンバー。このことから、生産人口の減少と高齢化が同時に進む中、いかに経済成長と財政の均衡を実現できるかが主な争点となる。
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