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トランプ弾劾が成立しない訳

Japan In-depth / 2019年10月2日 11時0分

だが弾劾は実際には始まらなかった。当初は弾劾措置を進める連邦議会でトランプ大統領を支える共和党が上下両院の多数派を占めていたため、民主党は動きがとれなかった。それが2018年11月の中間選挙で民主党が下院の多数を制したことから、状況がかなり変わった。


しかしそれでもペロシ議員は弾劾には反対だった。弾劾が成功する見通しはなく、一般有権者の多くは弾劾を嫌う傾向があるとの認識からの反対だった。そのうえに民主党が頼りにした「ロシア疑惑」が虚構だと判明してしまった。


だがここにきて、ペロシ議員ら民主党執行部も若手の強硬な意見に押されるように弾劾への動きを認めるにいたった。それでもなお民主党側にとっての展望は険しい。なぜなら弾劾を成功させるには上院全体の3分の2の議員の賛同を必要とするからだ。


下院は民主党が多数だからトランプ大統領に対して弾劾手続きに沿って、訴追に等しい措置はとれる。だがその最終決定を下す上院では共和党が100議席中53という過半数を占める。弾劾成立には67人の賛成票が必要なのだ。


上院の共和党ではトランプ大統領の政策に反対を述べるミット・ロムニ―議員のような批判派もいるが、これまで同大統領の弾劾措置に賛成を表明した議員は1人もいない。だから弾劾案は上院で否決される見通しが非常に高いのである。その確率は絶対確実といえるだろう。



▲写真 ミット・ロムニ―議員 出典:Flickr; Gage Skidmore


だがそれでもこの弾劾審議が下院と上院で展開されれば、トランプ政権にとっての打撃は疑いない。大統領自身、民主党の非難を「まったく根拠のない魔女狩り」だと排してはいるが、いったん議会の調査が始まれば、それへの対応に忙殺され、国政への支障が出ることは否定できない。だがそれでもトランプ大統領には就任以前から3年近くも戦ってきた「ロシア疑惑」での勝利の実績があり、打たれ強いことを証してきた。


その一方、今回の弾劾措置はそれを提起した民主党側にもブーメランのように跳ね返ってくる危険性がある。少なくとも3つの民主党への被害をあげてみよう。


その第一は有権者の反発である。


各種の世論調査では一般アメリカ国民の間には民主的な選挙で時間と手間をかけて選んだ最高指導者を議会での弾劾という例外的な措置で引きずり降ろそうとすることへの反発が伝統的に強いことが証されてきた。1998年に共和党議会が民主党のビル・クリントン大統領に対する弾劾措置を進めて失敗した後の選挙では共和党側は大幅に後退した。


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