島根県海士町再生、首長の覚悟
Japan In-depth / 2019年10月6日 23時0分
「それまでは、住民の間で、役場の職員は仕事が楽で、給料が高いというイメージがあった。しかし、住民の意識も変わりました。町の再生のためには『補助金もいらない』と返上する人も現れたのです」。
一方、同時に「攻め」の姿勢も鮮明にした。役場は「総合サービス商社」と称した。職員に「儲ける」意識を植え付けた。「外貨稼ぎ」を鮮明にした。産業をつくり、人口を増やすための人員を増やし、施策を強化した。役場の職員に必要なのは、学歴ではない。熱意・誠意・創意だと主張する。
「本気の人間には本気で支援する」。それが山内のモットーだ。東京から移住してきた若者が干しナマコを産業化したいと言い出した際、山内は支援した。つまり、干しナマコの加工場の建設費7000万円を計上した。「一人のために造るのはおかしいと議会で反対された」。
▲写真 干しナマコ加工場 出典:著者提供
山内はこう反論した。その若者が本気で海士町に定住して、干しナマコを売れば、ナマコを出荷する地元の漁師たちの懐も潤う。つまり、島の漁業を支援するための資金だと強調した。この干しナマコは高級食材として中国で売れ行き好調だ。
このほかにも、岩がきや白イカを、細胞組織を壊さず冷凍させる施設を5億円かけて建設した。限りなく生に近い食感を保てるのが特徴だ。本州まで運ぶ間に魚の鮮度が落ちて、安い値段で取引されていた状況が一変した。また、都会の大企業に勤めていた若者が相次いでIターンした。「島留学」を打ち出し、高校の生徒数は倍増した。
就任以来16年。山内は「外」からお金と人材の獲得に成功した。人口も下げ止り、借金も減った。人口問題に詳しい専門家によれば、海士町は2060年には人口が倍になる試算もある。「トップの仕事とは覚悟、決断、実行。それができなければ、町は沈む」。
山内の話を聞きながら、「町長の決断、そして議員や住民の共感」、そのプロセスが大事だと痛感した。
そういえば、連合艦隊司令長官、山本五十六はこんな言葉を残している。「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」。絶対服従の軍隊ですら、リーダーが率先しなければ、組織は動かない。地域再生にも当てはまる。
トップ写真:島根県海士町 山内道雄元町長 出典:著者提供
-
- 1
- 2
この記事に関連するニュース
-
[社説]与那国町長「覚悟」発言 危機高める決めつけだ
沖縄タイムス+プラス / 2024年5月7日 5時0分
-
首長の嫌がらせ 職員の被害見過ごさぬ制度に
読売新聞 / 2024年5月6日 5時0分
-
5万8000人の移住希望者が選ぶ「移住したい市区町村」ランキング! 2位「島根県海士町」、1位は?
オールアバウト / 2024年5月3日 11時50分
-
「お前らの脳みそは鳩の脳みそより小さい」 職員へのハラスメント認定の東郷町長が最後の登庁 見送りなく役場を後に
CBCテレビ / 2024年5月2日 19時5分
-
東郷町長「ハラスメント辞任」激しい呆れの根源 「お前らの脳みそは鳩の脳みそより小さい」
東洋経済オンライン / 2024年4月26日 17時40分
ランキング
-
1〈速報・那須2遺体〉“全身刺青”の宝島さん娘の内縁の夫が逮捕「何見てんだよ」とポルシェのオープンカーでライバル店に横づけ挑発…「彼はチンピラでした」「ほとんど亡くなった奥さんの命令で動いてた」
集英社オンライン / 2024年5月7日 1時17分
-
23か月後に再び来店“万引き犯”…店はマークしていた 札幌の53歳女逮捕「やっていません」
STVニュース北海道 / 2024年5月7日 9時17分
-
3「幼少期から酷い言葉を投げられることもあった」安達祐実(42)が週刊文春だけに語った実母への“絶縁宣言”
文春オンライン / 2024年5月7日 17時0分
-
4立て続けに自宅被災の珠洲市民、6割が再建の意欲低下…仮設住宅の女性「また被災するかも」
読売新聞 / 2024年5月7日 8時25分
-
5【中継】娘の内縁の夫が“首謀者”か 知人ら2人を死体損壊疑いで逮捕 那須夫婦遺体
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年5月7日 11時42分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください