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私のパフォーマンス理論 vol.38 - 目標設定-

Japan In-depth / 2019年10月10日 11時31分

私のパフォーマンス理論 vol.38 - 目標設定-

 


為末大(スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役)


 


【まとめ】


・目標は勝利条件に近づくように設定する。


・具体的な目標と、願望としての目標を区別する。


・具体的な目標は必ず試合後に振り返る。


 


目標設定の質を高めることで競技力向上を後押しすることができるし、目標設定の質が悪いために競技力が向上していないこともある。では質は何で決まっているのか。


まず目標は達成した場合に勝利条件に近づくように設定されなければならない。当たり前に聞こえるが、本来目指すべき勝利条件からずれているものや、時には遠ざかるものが目標に置かれることがある。このような設計をしてしまうと頑張っても意味がないし、頑張れば頑張るほどむしろ勝利が遠ざかるということが起こる。例えば、短距離走者が走り込みを行うことがあるが、競技力向上の為に300m10本全部を38秒以内でに走れることを目標に設定する。ところが頑張って実際にこれを達成しても、私の場合スピード強化にはさほど効果がなかった。量に適応してもスピードには適応できなかったからだ。頑張っていたとしても、考えることを怠けるとこのようなことが起こる。


目標が持っている要素には、難易度と状態と期間がある。以下私が気をつけていた点になる。


【難易度】-どの程度難しいことか※私にとって目標は達成できる確率が5-7割ぐらいのところがちょうどよかった。10回やって、5-7回ぐらいは成功するというものだ。


【状態】-具体的にどのような状態を目指すのか※具体的であるほど望ましかった。400Hを48″7で走り、5台目(185m地点)を21″3で通過しつつ、通過時点の努力度が8割程度の状態を目指す、など


【期間】-いつそれを達成するのか※どの試合を目指すのか。いつまでに達成するのかなど。


悪い目標の典型は、今シーズンは絶対諦めないで走る、というものだ。これはただの気持ちの表明でしかない。中学生程度であれば気持ちの表明でもいいが、トップを目指す競技者が目標を掲げてもあまり効果がない。このような達成されたのかどうか評価できない目標は気分を高揚させる効果しかない。


目標設定をよく観察していると実は二種類ある。一つは、ターゲットとしての目標、もう一つはそのぐらいの意気込みでやりますという願望としての目標だ。


具体的なターゲットは本当にそれを達成するために設定する。この目標は達成を具体的に目指しているものなので試合後に必ず振り返る。なぜうまくいったのか、なぜうまくいかなかったのか。どこに原因があったのか。それは防げたのか防げなかったのか。予想と違っていたことは何なのか。次回以降どうすればいいのかなど。何しろ達成できるものを目標にしているので必ず原因があるはずだと考えなければならない。ここで重要なのは仮にうまくいっても振り返り分析しておくことだ。目標設定は持っている情報から予測したものであり、もし上振れしたとしても予想が間違えているという点では下振れと変わらない。電車が5分遅くきても、5分早くきても、予想を外したと言う点では変わらない。


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