中東本格戦争に備えはあるか
Japan In-depth / 2019年10月12日 23時0分
追い詰められたイラン政権が、「ならばサウジも道連れにし、戦火の中に活路を見出す」と破滅的な賭けに出ても不思議はない。なにせ隣国の石油施設に突然ミサイルを撃ち込むという「国際経済秩序を人質にする卑劣極まる犯罪」(安倍首相の9月24日国連総会演説)を実行した政権である。
日本の政界では、「親日国家イラン」「イランと伝統的な友好関係をもつ日本」が枕詞だが、イランの現政権を文字通りそうしたイメージで捉えるなら甘すぎよう。
また、イランの指導部は基本的に国際常識に沿う存在だが、革命防衛隊に代表される「強硬派」ないし跳ね上がりが、かつての日本の関東軍のように、暴走を繰り返していると見るのも危険である。
▲写真 軍事演習に参加する革命防衛隊の海軍コマンド部隊 出典:Wikimedia Commons; sayyed shahab-o- din vajedi
イラン「イスラム革命」政権は、1979年の権力奪取以来40年の長きにわたって血なまぐさい弾圧とテロを繰り返してきた。革命防衛隊は、旧ソ連のKGBに似た組織で、対内テロと対外テロの両面を担う。対外テロ(シリアに拠点を置くヒズボラやイエメンの反政府勢力フーシ派等への支援を含む)を担当するのがコッズ(Quds)部隊(ソレイマニ司令官)で、アメリカはテロ組織と認定している。
▲写真 コッズ(Quds)部隊 ガーセム・ソレイマニ司令官 出典: Wikimedia Commons; sayyed shahab-o- din vajedi
戦前の日本は、少なくとも当時の水準に鑑みれば、自由民主主義と国際ルール尊重の優等生だった。関東軍の暴走を許したのも、大恐慌で世界が混乱して以降の時期にとどまる。イランの現政権はそうではない。自由、民主、法の支配、人権など文明社会の基本的価値に冷笑的に背を向け、テロを体質化させた政権と見なければならない。革命防衛隊はあくまでその先兵である。
イランが、サウジおよび周辺諸国の石油施設やタンカー(日本船籍を含む)への攻撃を今後は自制すると見なしてよい根拠はない。
サウジも決して「おとなしい」政権ではない。「イランがいま一度サウジの石油施設を攻撃すれば大戦争になる」(フック米国務省イラン担当特別代表)は決して誇張ではないだろう。テロから武力紛争へ、さらに本格戦争へというエスカレーションはいつでもあり得る。
▲写真 トランプ米大統領(2019年10月10日)出典: Flickr; The White House
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