尾道空き家再生プロジェクト(下)行政を巻き込む
Japan In-depth / 2019年10月21日 18時33分
▲写真 尾道ガウディハウス(旧和泉屋別邸) 出典:©NPO法人尾道空き家再生プロジェクト
ガウディハウスは、洋室と和室があるが、洋室は痛みが激しかった。一方の和室は掃除すれば利用できる状態だった。放置されていた家財道具などを廃棄。夫や友人に手伝ってもらって、2カ月かけて掃除した。
和室は使える状態になった。そこで、イベントを開いた。「尾道空き家談義」だ。アーティスト、若者、さらには建築家や大工などを招いて、放談した。また、蚤の市も行った。ガウディハウスには、古本、着物、食器、古道具などに戦前からのモノがたくさん残されており、販売したのだ。
▲写真 ガウディハウス 出典:著者提供
ちょうどそのころ、UターンやIターンの30代の家族が空き家に住むようになり、パン屋やカフェを開店していた。「役者が揃っていました。彼らと一緒に、空き家を舞台に、やりたいことをやる」。
ガウディハウスの購入後、動きは早かった。2カ月後の7月、自らが代表を務める市民団体、「尾道空き家再生プロジェクト」を設立した。そこに参画してくれたのは、地元の企業や、尾道に関心のある建築家や大学教授らだ。「子どもがまだ2歳で、手がかかっていたのですが、『今しかない』と決断しました。空き家は老朽化が進み、瀕死の状態。空き家問題は個人的にやるのでは、1戸か2戸しかできない。それなら団体をつくるしかない。自分は子どもたちの世代にもっと尾道らしい姿を残したいと思ったのです」。団体は翌08年NPO法人化した。
そこからが、豊田の真骨頂だ。ブログによる情報発信を始めた。同世代の若者たちと一緒に楽しんだイベント、ガウディハウスの改修作業、さらには、明治から昭和に伝わる尾道の街並みを伝えた。すると、全国から空き家や移住先を探しているという声が舞い込んできた。わずか1年で100件だ。わざわざ尾道に訪ねてくる人もいた。
「移住希望者が多くいて、空き家も山のようにある。それなのにつながっていない。それは残念でした。どこにどれだけ空き家があるのか、十分に把握されていませんでした」。
・尾道市の空き家バンクに参画
豊田は自ら、空き家めぐりツアーを実施し、空き家の情報を収集した。「社会問題なので、行政も巻き込みたい」。尾道市に働きかけた。結局、2009年10月、「空き家バンク」事業を請け負うことになった。空き家バンクとは、自治体が空き家情報を集め、移住希望者らにインターネットなどで発信する仕組み。
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