シリア米軍撤退終わらぬ戦争
Japan In-depth / 2019年10月23日 8時28分
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
「宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2019#43」
2019年10月21-27日
【まとめ】
・北シリアから米軍撤退では戦争の実態は変わらない。
・マコーネル米上院共和党院内総務がトランプ政権を批判。
・日本の米主導『有志連合』構想への参加見送りは中途半端。
ラグビーワールドカップ準決勝進出という日本の夢は遂に潰えた。南アフリカは実に速く強かった。筆者のような素人の目にも彼我の力の差は歴然だ。それでも多くの日本人は今回の日本チームの戦いぶりを決して忘れないだろう。9月20日からの夢のような一カ月間は、ジョセフHCの言う通り、まさに「脱帽」という他ない。
この一カ月で何百万もの日本人がラグビーファンに転向したのではないか。彼らのあのごっつい、マッチョな体躯からは想像もできないようなスピード。有難いことに筆者もこれで一通りラグビー関係ルールを理解できるようになった。ただ一つだけ気になったことがある。ある解説者が「これで日本の戦いは終わった」と述べたことだ。
揚げ足取りのようで申し訳ないが、「戦い」は終わったのではない。「戦い」は負けたのだ。決して勝ってはいないだろう。何でこんなことを言うのかって?実は試合の直前に読んだミッチ・マコーネル米上院共和党院内総務がワシントンポスト紙に書いたトランプ政権を批判する寄稿文の一節を思い出したからだ。
同議員は「戦争はただ終わるのではない。戦争では勝つか、負けるかしかないのだ」と言い切った。トランプ氏が「終わりのない戦争を終わらせる」として北シリアから米軍を撤退させたことを強く批判し、「そのような左右双方の孤立主義的レトリックを駆使しても戦争の実態は変わらない」と指摘したのだ。
▲写真 ミッチ・マコーネル米上院共和党院内総務 出典:Flickr: Gage Skidmore
そこらの民主党の陣笠議員ではない、与党共和党の上院院内総務(マジョリティリーダー)が現職の共和党大統領の政策判断を徹底的にこけ下ろしたのだから、穏やかではない。トランプ氏のこの新たな「勢いと偶然と判断ミス」による決定については英語のコラムに書いた。お時間があればご一読願いたい。
ちなみにこうした孤立主義的レトリックは日本にもある。8月15日は終戦記念日であって、決して敗戦記念日ではない。しかし、何度「終戦」と呼んでも、マコーネル院内総務が指摘した通り、「戦争はただ終わるのではない。戦争とは勝つか、負けるかしかないのだ」から、実に興味深いではないか。
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