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「日本の風土、再認識を」地域活性化センター理事長椎川忍氏(下)

Japan In-depth / 2019年10月28日 11時0分

「日本の風土、再認識を」地域活性化センター理事長椎川忍氏(下)


出町譲(経済ジャーナリスト・作家、テレビ朝日報道局勤務)


【まとめ】


・椎川氏、2008年、初代の地域力創造審議官に就任。


・2009年、都市から地方へ移住させる「地方起こし協力隊」創設。


・日本の風土を再認識する国民運動を仕掛けるべき。


 


(上のつづき。)


椎川は2008年に初代の地域力創造審議官に就任した。当時の総務大臣は増田寛也。命じられたのは、定住自立圏構想を制度化することだった。それは、地方から東京などへの人口流出を抑えるため、総務省が音頭をとった政策だ。つまり、人口5万人程度以上の都市が中心市となり、周辺の市町村と協定を締結し、定住自立圏を形成するものだった。


椎川は振り返る。「定住自立圏構想もいいのだが、それだけでは、不十分だと感じました」。そこで、思い出したのは、今回もまた、20数年前の島根県総務部長として赴任していた時のことだった。島根では当時、牧場が若者をインターンで受け入れていた。その現場が頭をよぎった。「同じように、全国規模で都市から地方に、直接若者の移住を後押しする仕組みが必要だと考えたのです」。


地方に直接、都会の人間を移住させる制度はないか。椎川は調べた。幾つかの先行事例があった。例えば、NPO法人地球緑化センターが実施していた「縁のふるさと協力隊」や、農林水産省の「田舎で働き隊」だ。さらには、海外青年協力隊を経験した若者が地方で起業したりしているケースがあった。


椎川はこうした事例の関係者や学識経験者らと協議した。そこで生まれたのは「地域おこし協力隊」だ。2009年度に始まった。思いついてから、わずか1年で実現した。


隊員は、都市部から過疎地などに一定期間住み、地域活性化に取り組む。隊員の給料は最大で、年間400万円だ。任期は1年で、最長3年まで延期可能だ。任期が終わった後も、定住してもらうのが狙いだ。発足した2009年度は、31自治体で89人にとどまった。新しい制度だけに、なかなか、自治体へ周知されなかった。


しかし、その後マスコミでの露出も増え、希望者が急ピッチに増えた。2018年度には5369人になった。結婚、定住する人は全体の6割を占める。任期途中で去る人も少なくないが、椎川は「当初、3000人を目標と考えていた。それを上回る実績となった。しかし、成功例をもてはやすばかりではなく、失敗例がることも十分に認識し、そこから学ぶべきだ」と強調する。


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