連合結成30年、山積する問題
Japan In-depth / 2019年10月28日 23時0分
八木澤徹(日刊工業新聞 編集委員兼論説委員)
【まとめ】
・連合、神津里季生会長3期目突入と結成30年の節目。
・規模の縮小や内部の不協和音など、問題山積。
・2020年春闘基本構想案。格差是正とボトムアップを掲げ方針転換。
日本労働組合総連合会(連合)の神津里季生会長が10月11日の定期大会で正式に続投が決まった。連合会長の任期は2期4年だが、異例の3期目に入る。実は2年前、1期2年での退任の意向を固めていた。後任問題で2期続投となったが、3期目も問題山積だ。
連合は今年11月に結成30年を迎える。神津会長は「色々あってもまとまりを強固にしてきた意義は大きい」と語る。
▲写真 連合結成大会(1989年11月21日、東京)出典:日本労働組合総連合会HP
連合は1989年に官公庁労組を中心とする旧社会党系の総評と、旧民社党系の同盟の流れをくむ民間労組が大同団結し発足した。自治労、日教組の共産党系反主流派は分裂し全労連を形成、総評左派は全労協を形成した。
連合は発足2年目に808万人組合員と総労働組合員1200万人の3分の2を占め、大きな政治的な発言力を有するに至った。しかし、製造拠点の海外流失や非正規社員の増加など労働の流動化、若者の組合活動の敬遠などから2007年には664万人にまで落ち込んだ。現在は700万人を回復したが増加分はパートなど非正規社員がほとんど。従業員100人未満の中小組織率は1%を切っており、「1000万人連合」の目標にはほど遠い。
1993年の非自民系の細川連立政権、2009年の民主党政権の誕生を後押しした。一方、2005年の郵政解散衆院総選挙で郵政民営化を巡って民主党との間で有効な政策協定を組めなかったため、小泉流選挙の下で民主党は大敗。連合が目指す2大政党も遠のく結果となった。
2年前には神津氏自身が希望の党結成に立ち会い、民進党の分裂を招く結果となった。現在は支持政党の分裂や化学総連の脱退など連合内部の不協和音も表面化している。電機連合などの産別では自民党に投票する組合員が半分以上を超え、国政選挙では組織内候補が相次いで落選するなど野党の惨敗を招いている。
政府と労働組合との間の政労合意に基づいて、労働者全体の利益となる経済・行財政改革に寄与しうる可能性は連合というナショナルセンターの誕生で大いに高まったが、バブル崩壊後のデフレ経済下での春闘で雇用確保・実質賃金確保を最優先とした実質的な賃下げ容認や、官公労の既得権益を合理的に解消させることが「統一と団結の呪縛」でできなかった。
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