ウォーレン候補「出自偽装」
Japan In-depth / 2019年11月1日 18時0分
具体的に見てみよう。ウォーレン氏の「出自擬装」問題は、元々の人種詐称に加え、不可解な弁明、矛盾した対応と何層にもわたっている。
ウォーレン氏は、ケネディ大統領兄弟などを輩出し、ハーバード大学を抱えるリベラル・インテリの牙城マサチューセッツ州の選出で、地元では安定した選挙戦を戦ってきた。ハーバード大学教授の肩書は、もちろん選挙において「大きな売り」だった。
ウォーレン氏はかねて、アメリカ社会の歴史的な不正を正す「積極的差別修正措置」(affirmative action)の必要を声高に唱えてきた。黒人奴隷やインディアンの子孫に入試、雇用、公共事業配分などにおいて様々な優遇措置を講じる政策である。
白人に対する「逆差別を生む」あるいは「出自の詐称による新たな不正・不公平を生む」との批判には、「あなたは白人至上主義者か」とのレッテル貼りで対抗してきた。ところがその本人が、まさに被差別者優遇措置の不正利用を問われたわけである。
ウォーレン氏は、出自を出世に利用したことは一切ないと強調する。しかしワシントン・ポスト紙の調査で、弁護士時代の登録書に「アメリカン・インディアン」と手書きで記していた事実が明らかになった。その1年後にペンシルベニア大学に教員採用され、さらに数年後には、ハーバード大学教授に「栄転」している。
▲写真 ハーバード大学。ウォーレン氏は「マイノリティ教員」のリストに掲載されていた。出典: Flickr; David Ohmer
米国では、エリート校であればあるほど、教員の「多様性」確保に気を使う。特にハーバードの場合、ウォーレン氏の教員採用当時、アメリカ先住民の教員を欠きながら「多様性に満ちたキャンパス」を謳うのは虚偽広告との訴訟に晒されており、人事に当たって「先住民」という要素が考慮されなかったとは考えにくい。現にペンシルベニア大、ハーバード大ともに、公表した「マイノリティ教員」のリストにウォーレン氏の名前を入れている。
作年秋、ウォーレン氏は疑惑を払拭するとしてDNA検査を受けたが、まずこの行為自体が先住民団体から強い批判を受けた。「アメリカ先住民」であるか否かは、その伝統文化および苦難の歴史を受け継ぐ意志に存するのであり、「血の濃淡」は関係ないからである。
白人であっても、結婚等を通じてインディアンの家庭に入り、伝統継承活動に熱心に参加すればインディアンと見なされる。血筋はインディアンであっても、その文化に意志的に背を向けるならば、インディアンとは見なされない。そしてウォーレン氏は、先住民団体の活動におおむね無関心だった。
この記事に関連するニュース
-
バイデン氏の“撤退論”収まらず 「選挙戦の継続可否を検討」とニューヨーク・タイムズ紙 アメリカ大統領選
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年7月4日 11時51分
-
米大統領選、民主党「進むも地獄、退くも地獄」
Japan In-depth / 2024年7月3日 10時57分
-
討論会後、4割がトランプ氏への投票により前向きに、米大統領選挙世論調査(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年7月2日 14時25分
-
米欧紙、バイデン氏に相次ぎ大統領選挙戦からの撤退要求「新候補を」「年長者の英知示せ」
産経ニュース / 2024年7月1日 10時45分
-
規制論はどこへ...「反TIkTokの2人」も夢中で投稿 米大統領選は史上初の「TikTok選挙」に?
ニューズウィーク日本版 / 2024年6月25日 14時32分
ランキング
-
1何度も叫んだ「助けて」 駆け付けたヤマト配達員らに称賛の声
毎日新聞 / 2024年7月6日 8時30分
-
2JR常磐線で死亡事故 60代の男性が電車の下に入り込む
福島中央テレビニュース / 2024年7月6日 6時12分
-
3鹿児島県警の野川明輝本部長を不起訴…不祥事の隠蔽疑惑で刑事告発
読売新聞 / 2024年7月5日 22時42分
-
4「お前臭いねん」洗濯機に同僚の50代男性を入れて回した疑いで30代男2人逮捕 男性は「過去にも暴行を受けていた」と話す
MBSニュース / 2024年7月5日 19時40分
-
5「今日はやめよう、終わり」説明の場に係長不在で立腹し面談1分、長谷川岳参院議員“威圧的言動”新たに…要職就任で挨拶に行くと「遅いのは犯罪、帰って」「反省文」も
北海道放送 / 2024年7月6日 9時9分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)