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定期テスト廃止した公立中学(下)

Japan In-depth / 2019年11月5日 11時0分

それでは工藤が掲げる「全員担任制」とは、いったいどのようなものなのか。「チーム医療」のようなものだという。チーム医療は、1人の患者に対して、複数の医療スタッフが連携して治療にあたる。麹町中学では、チーム医療の「患者」を「子ども」に置き換えた。子どもが抱えた問題に適切に対処するため、学年のすべての教員が生徒を見るやり方だ。


1人ひとりの教員には、それぞれ得意分野がある。生徒の気持ちを読み取るのがたけている教員もいれば、保護者とのコミュニケーションが上手な教員もいる。さまざまな個性を生かし、学年を運営する。これが「全員担任制」だ。



▲画像 pixabay by rawpixel


「子供にとっては、誰と相談してもよく、選択権があるのです。自分で選択ができるので人のせいにしなくなる」。「全員担任制」で大事なのは、教員同士の連携だ。どの学年も週に1回会議を開き、情報共有を図っている。責任の所在があいまいになるのではないかとも懸念されるが、麹町中学では、学年主任と副学年主任が学年の生徒を把握し、コーディネーター役になっている。「学年主任や副学年主任が子供のことをベストで考えられる人物であることが大事だ」。


麹町中学では、服装や頭髪指導を行っていない。かつては厳しく規定されていた。スカートの長さは「ひざが隠れる程度」で、靴下は「白の無地」。頭髪も「パーマ、整髪料、脱色、髪染め」などを禁止していた。


工藤はこうした規則自体重要ではないと判断した。「『服装頭髪の乱れが心の乱れ』なんて言いますけれども、心なんか乱れていません。関係ない。茶髪の子もいます。しかし、そこに誰も意識が行かないので、子供は悪いことをしていると思わない」「問題だと言わなければそもそも問題にならないのです。スカートの長さを注意していると、スカートの長さを1センチでも短くしたい子供が育ちます。意識しなければ、子どもたちは、そんなことに時間も労力も使いません」。


工藤は、麹町中学に赴任した際、服装頭髪の注意ばかりしている教員を呼んだ。「服装頭髪の注意が随分多いですね。もし服装頭髪の注意を取ったら、1日の中で生徒となんの会話をしているのですか」。痛烈な皮肉を込めた質問だった。服装頭髪指導より大切なのは、「命を大切にすること」と「差別をしないこと」だと、工藤は考える。


その後、教員の意識も変わった。制服・頭髪の指導をやめた。さらに、服装や頭髪のルールについては、その権限をすべてPTAに委譲した。学校が縛り付けるやり方は変わったのだ。


冒頭でも申し上げたが、日本の最大の弱点は、ジョブズやザッカーバーグを生んでいないことだ。それは国際的な競争力を意味するだけではない。衰退する地方でも、地域版のジョブズが現れれば、一気に熱気がみなぎるだろう。「当たり前をやめる」。その姿勢こそが日本を救うと思う。


(上の続き。全2回)


トップ写真:工藤勇一校長と筆者 提供:筆者


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