松根油、航空燃料復活の可能性
Japan In-depth / 2019年11月8日 18時0分
■ 再生可能エネルギー
第3が再生可能エネルギーの利点である。
航空燃料はグリーン化が求められている。飛行機はCO2排出量が問題視されている。そのため民間航空はバイオ燃料導入を進めている。軍隊もその流れに追従している。米海軍省は10年前から戦闘機や軍艦へのバイオ燃料導入を試みている。
▲写真 100%のバイオ燃料で飛行する米海軍EA-18G Growler(2016年9月1日 米・メリーランド州)。米海軍省はグリーン燃料に熱心でいずれは海軍や海兵隊に使わせるつもりでいる。
出典: 米海軍写真(撮影:Adam Skoczylas)
松根油燃料はこの時流に沿っている。高比重燃料では唯一のカーボン・ニュートラルだからだ。
材料は特殊ではない。松根油は松の根以外からも採取できる。針葉樹であれば製紙チップや製材端材からも副産物としても得られる。テレピン油や残渣のロジンはそのようにして商品化されている
やや離れるが原油価格高騰への対処ともなりうる。松根油は原油由来ではない。また天然ガスや石炭といった化石燃料の生産や消費と競合しない。また種子油脂を主原料とするバイオ燃料とは異なり食料資源とも競合しないのである。
■ ベース燃料としての利点
松根油燃料の利点は以上のとおりである。
なお、さらなる性能向上の方策もある。比重1.1のアダマンタンや1.3のキュバンといったワックスの溶解や固体炭素やアルミ、ホウ素のナノ粉末混和による性能向上である。松根油燃料にホウ素を3割混和させれば容積熱量は従来燃料の50%増となる。
もちろんブレンドは他燃料でも可能だ。ただベース燃料としても松根油は安価であり再生可能である。その点でも優れている。
▲図 アマダンタンは将来航空燃料としてよく言及される。融点は高いが燃料には容易に溶解する。塩は800度まで溶融しないが20度の水でも溶解することと同じである。筆者作図
なお、高比重燃料に関しては以前に『軍事研究』に発表している。
文谷数重「『高比重燃料』軍用ビークルの燃費革命」『軍事研究』2018年5月号(JMR,2018)pp.182-194.
その元となった同人誌『高比重燃料の活用』に関しては以下の通販で頒布中である。
https://ec.toranoana.shop/tora/ec/item/040030773469(とらのあな)
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