奇跡の集落「やねだん」とは 「地域再生の神様」豊重哲郎氏 上
Japan In-depth / 2019年11月25日 10時35分
この体験をきっかけに集落では、「稼ぐ」ことの尊さが浸透した。その後、サツマイモづくりは集落全体での作業になった。子供が動けば、大人も動く。サツマイモ生産は毎年拡大していった。一度の作業に住民100人が参加し、植え付けに3時間、収穫に4時間かかる。植え付け作業は午前7時からスタートするが、高齢者は5時からトラクターで土が乾かないよう畝づくりをやった。
崩壊しつつあった集落が息を吹き返し始めた。「集落全員はレギュラー選手で、補欠はない。全員野球の村おこしが重要だ」という豊重の思いが伝わった。
その後、加工食品が必要だと考えた豊重は焼酎の販売に踏み切った。この焼酎は大化けする。
きっかけをつくったのは、ホテルチェーンなどを展開している韓国の実業家、キム・ギファンだ。キムは2009年、たまたま滞在先のホテルのテレビで〈やねだん〉を紹介したVTRを見た。
補助金に頼らない自主自立の精神にすっかり魅入られた。韓国でも過疎化に悩まされており、〈やねだん〉の取り組みに驚いたのだ。そして、現場を実際見てみたいと思って、〈やねだん〉をお忍びで訪れた。
キムはこの焼酎を韓国に輸入することを決断。〈やねだん〉から1000本単位で焼酎を輸入し、店で販売した。韓国で日本風の居酒屋〈やねだん〉をオープンした。
▲写真 芋焼酎「やねだん」 出典:著者提供
〈やねだん〉の自主財源はみるみる増え、500万円になった。そのお金をどう使うべきか。話題となったのは、集落のすべての世帯向けのボーナスだ。新聞、テレビで大きく取り上げられた。
集落のすべての世帯に1万円のボーナスを支給した。ボーナス支給式典では、豊重は1人ひとりに熨斗袋を手渡した。なぜボーナスを支給したのか。
「ボーナスは、一緒に、汗してくれてありがとう、協力してくれてありがとう、という意味で出しました。これ以上、金を蓄財するよりも、一気に、住民に還元してあげるほうがいいと思いました」
自主財源は、住民のためにさまざまな形で使われる。例えば子供たちに勉強を教える寺子屋への補助だ。豊重は非行に走る子供たちと話をすると、「勉強が理解できない」という言葉が返ってきた。それならと作ったのがこの寺小屋だ。「将来のある子供たちに〈やねだん〉に住んで良かったと思われたい」と、豊重は話す。
ある年は高齢者に感謝の意を示すため、19台の手押し車を購入した。さらに、注目すべきは、集落の古民家の再生だ。「迎賓館」と名付けられ、そこに全国から芸術家の移住者を募った。
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