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がん検診革命リキッドバイオプシー

Japan In-depth / 2019年11月30日 11時0分


▲図)リキッドバイオプシーについて 出典:Wikimedia Commons; 国立がん研究所


従来、がん細胞を採取しようとすれば、白血病など一部の悪性腫瘍を除き、手術や生検などの侵襲的な処置が必要だった。患者の全身状態が悪ければ、手術や生検は難しい。


ところが、リキッドバイオプシーで求められるのは基本的に採血だけだ。従来の方法と比べて、はるかに低い侵襲で大きなデータを入手できる。血液検査であれば、どこでもできる。この検査が普及すれば、へき地に住む患者でも、地元のクリニックで検査を受けるだけでいい。


ただ、リキッド・バイオプシーを実施するためには高度な技術が必要だ。血液中を循環する腫瘍細胞および腫瘍細胞由来のDNAなどの物質は、ごくわずかだからだ。腫瘍細胞の場合、通常1 mLの血液中に10細胞以下だ。従来の技術では検出できなかった。これを可能にしたのが、近年のゲノムシークエンス技術の進歩だ。


現在の技術では、数コピーのDNAでも検出可能だ。10 mLの採血をすると9,000コピー程度のDNAを採取できる。この中に0.1~0.01%程度のがん由来のDNAがあれば、それを検出できる。


そして、近い将来には、シークエンス技術の進歩で、この程度のDNAさえ確保できれば、がん細胞の一部の遺伝子情報だけでなく、全ゲノムを解読してしまうようになる。


現在、世界中の企業がリキッドバイオプシーの技術開発に鎬を削っている。近年の研究では、がん患者の70~80%程度で血液から充分な量のがんDNAを抽出できることがわかっている。リキッドバイオプシーのシークエンスの結果は9割程度でがん組織と一致する。


すでに、幾つかの興味深い研究成果が報告されている。米ジョンズ・ホプキンス大学の研究者たちは、2018年1月に米科学誌『サイエンス』に自らが開発した”CancerSEEK”と呼ばれるリキッド・バイオプシーの研究成果を公表した。



▲写真 ジョンズ・ホプキンス大学 ギルマンホール 出典:Pixabay;David Mark


結果は驚くべきものだった。肝臓がんや卵巣がんなど血管が豊富な組織で発生したがんでは、ステージ1でもほぼ100%が検出できた。これは現行のがん検診を遙かに上回る。乳がんや食道がんでの検出感度は悪かったものの、全てを合計して検出率はステージ1で43%、ステージ2で73%、ステージ3で78%だった。


ステージ2とは、がん細胞が粘膜下の筋肉層に到達しているが転移はなく、多くは手術で治癒するものだ。つまり、採血をするだけで、手術によって治癒が期待出来る早期がんを見つけることができることになる。胃がん検診で必要なバリウムや胃カメラを飲んだり、肺がん検診で必要な胸部X線検査を受ける必要はない。手間をかけずに早期がんを検出できる。


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