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がん検診革命リキッドバイオプシー

Japan In-depth / 2019年11月30日 11時0分

技術開発の筆頭を走るのは、米シリコンバレーのグレイル社だ。ゲノムシークエンスの最大手のイルミナ社から2016年にスピンアウトした。


同様の試みは日本でも始まっている。11月25日、東芝は血中のマイクロRNAを用いて、がん患者と健常者を識別できるリキッドバイオプシーを、東京医科大学および国立がん研究センターと共に開発したと発表した。13種類のがん患者と健常者を99%以上の確率で識別できたという。中にはステージ0の早期がん患者も含まれていた。


“Cancer Precision Medicine”社もリキッドバイオプシーの受託検査サービスを開始した。この会社は中村祐輔・がん研究会がんプレシジョン医療研究センター長が設立したバイオベンチャーのオンコセラピー・サイエンス社の子会社で、米サーモフィッシャー・サイエンティフィック社が開発した技術を導入している。



▲写真 サーモフィッシャー・サイエンティフィック社 出典:Wikimedia Commons; Coolcaesar at en.wikipedia


症例数が蓄積するとともに、技術開発は急速に進むだろう。私は、遅くとも数年の間に臨床応用され、技術として確立すると予想している。


こうなるとがん治療は一変する。肺がんのX線やCT検診、胃がんの内視鏡やバリウム検診は採血になる。患者にとって負担は大幅に下がる。


術後の再発のスクリーニングにも用いられる。従来、がんの再発は死亡を意味したが、早期に治療することで治癒が可能になるかもしれない。その際の治療の中心はがん免疫療法になるはずだ。免疫療法は腫瘍量が少ないほど、高い効果が期待出来るから、再発早期の患者は格好の対象だ。


ところが、私はこの技術の普及について不安がある。リキッドバイオプシーの普及はがん医療業界のパワーバランスを変えるからだ。特に検診だ。この領域で生活してきた多くの人が「失業」を強いられる。必死に抵抗するだろう。


早期がんの多くを見落とし、集団の予後を改善しないことが公知の胸部X線を用いた肺がん検診など、その典型例だ。公的ながん検診に胸部X線を用いている先進国は、私の知る限り日本だけだ。ところが、国立がん研究センターを筆頭に低線量CT検査に否定的な見解を示し続けてきた。興味のある方は拙文をお読み頂きたい。


どうすればいいのだろうか。私はリキッドバイオプシーを含め、がん検診に関する正確な情報を社会でシェアし、公で議論することだと考えている。そのためにはメディアの役割が大きい。メディアが問題点を広く報じなければ、誰も問題の存在を認識できないからだ。本稿が、その一助になれば幸いである。


トップ写真:検体検査の様子(イメージ) 出典: Official United States Air Force Website


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