異国で生きる孤独 ~イラン人がん患者、シャハワンさんと出会って~
Japan In-depth / 2019年12月2日 23時0分
そんな中訪れた、イラク北部クルド自治区のダラシャクラン難民キャンプ、及び非公式であるドホークの難民キャンプを訪れた。キャンプでは、強い閉塞感と子供の造られたような笑顔に強い衝撃を受けたという。
外の世界から遮断された難民キャンプに訪れたサヘルさんに、住民たちは興味を持ち、非常に友好的だった。閉塞感溢れるキャンプに住む人たちからの熱烈な歓迎から、外の世界への繋がりや、外からの愛や関心への渇望を、サヘルさんは目の当たりにしたという。
またキャンプの子供達がカメラを向けられた時の笑顔にも、サヘルさんの心に引っかかるものがあった。カメラの先にいれば、綺麗な笑顔を向ける子供たち。日々の生活の悲しさや不安といった感情を押し殺して作り出す笑顔に、サヘルさんは「誰かにもらっていただけるように、来賓には笑顔で挨拶をしなさい。」と教えられていた、自らの孤児時代を思い出す。実際、子供達には「ここから連れ出してください」「いつ僕たちを連れて帰ってくれるの?」といった声を頻繁にかけられ、その度に表現しがたい無力感を覚えたという。
▲写真 JIM-NETハウスの子供達の絵を背に、今回の旅の経験を語るサヘルさん ©Japan In-depth編集部
最後に、サヘルさんはイラク北部アルビルにあるJIM-NETの総合支援施設、JIM-NETハウスを訪問する。その際「ハウスに今、イラン人の家族が住んでいる」と声をかけられ出会ったのが、シャハワンさん一家だったという。
シャハワンさんは、イラクに住むクルド系イラン人。2014年6月、当時活動的であったIS(イスラム国)の中東全体への支配圏拡大が進む中、イラクではクルド自治政府の兵士が前線に。イラク国内の同胞が苦しむのを見過ごすことができなかったシャハワンさんは、イラン国内のクルド人政党の軍事部門を通して、イラク北部で展開している軍事作戦に参加する。
しかしイラクでの戦闘に参加する最中、自身が慢性骨髄性白血病(CML)を発病したことを知る。イラン国内で禁止されたクルド人政党を通しての渡航だったため、入国時迫害を受ける危険があり、帰国を断念。シャハワンさんが病に犯されているのを知り、両親と妹、そしてその子供が看病のためイラクへ渡航。その結果、全員イランへ帰ることができなくなってしまう。
同じクルド人の居住する地域とはいえど、言葉も、食事も、文化も違ったイラクでの生活に、家族全員が精神的にすり減っていっていくのを、サヘルさんは目の当たりする。妹のアーレズーさんは必死に仕事を探すが、言葉が通じないため職につくことができず、苦い思いをしているという。 両親も塩分と油分の強いイラクの食事が合わず、毎日の食事が楽しめないと言う。また言葉のせいで、家族は現地で思うように交友関係を築くことができず孤立した生活を送っていると言う。
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