フィリピン、戒厳令を解除へ
Japan In-depth / 2019年12月9日 18時0分
大塚智彦(フリージャーナリスト)
「大塚智彦の東南アジア万華鏡」
【まとめ】
・フィリピンミンダナオ島一帯の戒厳令、解除される可能性が高くなった。
・マルコス時代回帰の懸念・テロとの戦いへの必要から、延長論も。
・ドゥテルテ大統領、さらなる支持獲得のため戒厳令解除へ。
12月末に期限を迎えるフィリピン南部ミンダナオ島一帯に布告されている戒厳令について、延長することなく解除される可能性が極めて高くなった。これは11月4日、フィリピン国家警察、国軍などからの進言を受けて内務自治省も延長しない方向でドゥテルテ大統領に「戒厳令解除」を提案することを明らかにしたことからそうした観測が強まっているのだ。
ミンダナオ島一帯の戒厳令は2017年5月25日に地元の過激組織「マラテグループ」が同島南ラナオ州の州都マラウィを武装占拠した事態を受けてドゥテルテ大統領が布告した。
マラウィ市武装占拠には中東のイスラム系テロ組織「イスラム国(IS)」と関連があるイスラム教徒のテロリストやフィリピン南部を活動拠点とするイスラム系テロ組織「アブサヤフ」のメンバーらが合流してフィリピン治安部隊と激しい市街戦を繰り返し、多くの魏犠牲者が出た。
同市は2017年10月に武装勢力が一掃されて解放されたものの残党テロリストなどが同島の他の地域などで活動を継続しているとの情報があり、軍や警察の進言もあり戒厳令はこれまでに複数回延長を繰り返し、現在も継続されている。
▲写真 政府軍が過激派から回収した武器 出典:Wikimedia Commons
戒厳令下では治安部隊に令状なしの捜索や容疑者検挙を可能にするなど超法規的措置が許されていることからミンダナオ島では反政府組織やテロ組織の活動封じ込め、掃討作戦に一定の効果をあげていたとの評価も出ていた。
■ マルコス時代の悪夢への警戒
その一方でフィリピンでは戒厳令はマルコス独裁政権が1972年9月21日に戒厳令をフィリピン全土に布告して憲法を停止して学生や活動家などによる反政府活動への弾圧に利用、独裁政権の地歩を固めたことへの反省などから人権団体などを中心に「戒厳令の早期解除」を求める声も一部とはいえ強く残っているのも事実。
▲写真 フェルディナンド・マルコス 出典:Wikimedia Commons
マルコス時代の戒厳令布告の記念日でもある9月21日にはレニ・ロブレド副大統領が「マルコス暗黒時代の日々を忘れてはならない。当時を知らない若者は戒厳令が単に政治的なものだけでなく国民生活の隅々まで影響を及ぼすものである」との声明を出して戒厳令に反対する立場を示していた。
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