企業版ふるさと納税と首長の力量
Japan In-depth / 2019年12月12日 18時0分
出町譲(経済ジャーナリスト・作家、テレビ朝日報道局勤務)
【まとめ】
・「企業版ふるさと納税」、企業の負担割合
・株主の理解を得られる事業を、地方自治が申請できるかが大切。
・首長のフットワークの軽さが地域の未来を決める。
国の制度をどう使うのか。地方自治体の大きな仕事だ。積極的に活用するためには、首長のフットワークの軽さが大事になる。漫然としていては、何も得られない。元官僚がトップだからといって、国の制度を上手に利用できるわけでもない。結局、トップの気合い、やる気が肝要となる。
私は地方自治体を取材して、つくづく実感する。企業版ふるさと納税について、政府は来年度から、より使いやすい仕組みにする方向だ。しかし、ある政府関係者は「国がどれだけ制度を充実されても、地方が動いてくれないと、機能しない」と嘆く。首長がトップセールスで動くところ、動かないところで、明暗が分かれる。
企業版ふるさと納税は、企業が自治体に寄付する制度である。ポイントとなるのは、寄付した企業の税金の負担がどれだけ軽くなるかだ。これまで、寄付額の6割だったが、来年度から9割に広げる案で最終調整している。つまり、企業は「企業版ふるさと納税」で寄付すれば、9割のお金が戻ってくる仕組みとなる。1000万円寄付すれば、900万円返金される。100万円の負担で1000万円寄付したことになる。
▲写真 「企業版ふるさと納税」制度の流れ 出典:首相官邸
企業版ふるさと納税は、2016年度に始まった。個人版と違って、返礼品がない。このため、お得感が見えにくく、伸び悩んでいる。寄付額は2018年度で34億円だ。初年度の4倍以上になったが、個人版のふるさと納税の寄付額は5127億円に上る。ケタはずれに少ないのが現状だ。
政府は今回、「企業版ふるさと納税」で戻ってくるお金の割合を9割にする方向だ。企業が寄付しやすい環境をつくろうとしている。企業は企業版ふるさと納税で寄付することで、地域貢献をアピールできる。また、企業のイメージアップにもつながる。
このところ、企業の社会貢献の重要性が指摘されており、こうした流れも、企業版ふるさと納税の普及に弾みがつく可能性がある。ただ、9割戻ってくるとはいえ、1割負担するのは企業だ。株主と向き合う必要があるため、無駄なお金を出すわけにはいかない。企業の利益になることを説明する必要がある。
それでは、企業が寄付できるのは、自治体のどんな事業か。自治体側が申請し、内閣府が認定した事業が対象となる。具体的には、観光振興や産業振興などだ。
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