企業版ふるさと納税と首長の力量
Japan In-depth / 2019年12月12日 18時0分
政府は来年度から、自治体が申請しやすくする仕組みも整える。これまでは、国の補助金を受けている事業は、対象外だったが、今後は、寄付の対象として認定を受けられるようになる見通しだ。
つくった制度をより、使いやすくする。「企業版ふるさと納税」に関する国のプロセスは健全だと思う。そこで問われるのは、自治体側の力量だ。企業が株主の理解を得られるような事業を申請できるかどうかが大切になる。
その際、トップの動きが事態を動かす。私が思い出すのは、北海道知事の鈴木直道だ。去年取材した際には、夕張市長だった。鈴木は「企業版ふるさと納税」の制度をつかって、家具大手のニトリから、5億円の寄付をうけた。夕張市は言わずと知れた破たんした自治体だ。まちを縮める「コンパクトシティー」は不可欠だったが、ニトリの寄付は、その拠点施設の整備に充てられる。ニトリは北海道が創業の地だ。
▲写真 夕張市複合施設外観イメージ 出典:首相官邸
鈴木はニトリ会長の似鳥昭雄に直談判し、巨額の寄付が実現した。借金返済に汗をかく鈴木の姿に感銘を受け、似鳥は動いた。「北海道への恩返し」と言ってお金を出した。鈴木はまた、漢方薬のツムラからも3億円の寄付を受けた。こちらは認定こども園に使われる。鈴木は東京までの出張費も自腹。そのフットワークの軽さが、巨額の寄付につながった。
そのほかにも積極的に動く自治体トップはいる。しかし、残念なことに、申請することもなく、音なしの自治体も数多い。財政的に余裕があるのか、それとも、申請作業が面倒なのか。面倒だとすれば、首長、公務員の職務怠慢だ。
私は、国におねだりする手法の首長はもう時代遅れだと、実感する。セールスマンとして、どれだけ動けるかどうか。「熱意をもって窮状を説明する」「頭を下げる」。そんな首長の“汗”こそが地域の未来を決める。
(敬称略)
トップ写真:鈴木直道 出典:flickr photo by Casino Connection
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