かくして労働党は自滅した 速報・英国総選挙2019(中)
Japan In-depth / 2019年12月16日 23時0分
しかし、今回の総選挙で労働党が大敗(解散前の244議席から、203議席に激減)したのは、コービン党首の責任以外のなにものでもない。
まずは、選挙の最大の争点であったブレグジットに対して、離脱すべきなのか残留すべきなのか、明確な指針を示すこともなかった。これは前回述べた通りである。
しかも、他にどのような公約を掲げていたのかと言えば、なんと「計画経済」だった。
大企業や富裕層から税金を取り立て、さらには一部の基幹産業を国有化して、政府の財源を確保し、雇用の増大と福祉や教育への投資拡大を図る、というものである。
さらには労働時間の短縮を図り、労働党政権になれば週休三日制、などという宣伝もしていたが、これでは公共サービスなどがもたなくなるし、富裕層が一斉に英国外に出てしまっては元も子もない、と非難された。
そもそも、これまでブレグジットの実行を押しとどめていたのは、単一市場から抜けることで大いにダメージを受けるとする、財界からの強い圧力だった。
労働党左派、すなわち社会民主主義者が財界に媚びることなどできない、という論理なのかも知れないが、ブレグジットに対しては優柔不断、それでいて財界や富裕層を敵に回すという政策では、自分から挟み撃ちに遭いに行くようなものではないか。
ここで、読者は疑問に思われないだろうか。
英国労働党は、なんだってまた、そんなオールド・ボルシェビキ(高齢の、あるいは古いタイプの共産党員)みたいな考え方をする人物を、党首に選んだのか、と。
1990年代、それまで新自由主義に基づく規制緩和と、炭鉱などの労働組合運動に掣肘を加えるなど、英国経済の立て直しに功績があったサッチャー元首相の前に、手も足も出なかった労働党は、新自由主義でもなければ、もはや時代遅れとなった、労組に頼っての社会主義国家建設路線でもない「第三の道」を提唱するトニー・ブレアを党首に選んだ。
▲写真 トニー・ブレア元首相 出典:ウクライナ政府
そして、1997年の総選挙で、18年ぶりの政権奪回を果たしたのである。
しかし、2010年の総選挙で保守党に政権を明け渡して以降、またしても「万年野党」かと思われるような低迷期に入ってしまった。とりわけ経済政策をめぐる党内論争がなかなか決着せず、マスメディアで映えるようなリーダーも輩出できなかった。
そして2015年に、またしても保守党に敗れた後、最大の支持母体である労組の中から、あらためて左派のリーダーをかつぐべきだ、との声が起こったのだった。
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