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オリンピック後が真の 正念場【2020年を占う・経済】

Japan In-depth / 2019年12月28日 18時0分

このうちキャッシュレス決済は、第4次産業革命の鍵を握るエンジンの一つで、ビッグデータ等の利活用に向けた成長戦略とも深く関係する。だが、現金信仰の強い日本ではなかなか進まない。


実際、経産省の資料「キャッシュレスの現状と推進」(平成29年8月)によると、民間最終消費支出に占めるキャッシュレス決済額の割合は、2008年の12%から、2016年で20%にまで増加したが、アメリカ・中国・韓国と比較すると、その半分以下の利用しかない。例えば、2015年では、アメリカが41%、中国が55%、韓国が54%もの利用状況だが、日本は18%しかない。


このため、当初、政府は、次のような方向性で対策の検討を進めていた。具体的には、1)大企業以外の小売店で現金を使わないキャッシュレス決済をした場合、1年間という期限付きで、増税分(2%分)をポイントとして還元する。2)ポイント還元の対象としては、クレジットやデビットカードのほか、電子マネーやQRコードでの決済も含める、というものだ。


ポイント還元策はキャッシュレス決済を促進させる起爆剤となる可能性があり、筆者もその政策的意義は理解しているつもりだが、2018年11月下旬、安倍首相がキャッシュレス決済で5%のポイント還元の検討を表明し、それが実行されたことから、状況が一変した。ポイント還元の期間は、「1年」から「増税から2020年夏の東京オリンピック前の9か月」に短縮したが、これは増税ショックを増幅するリスクがある。


ところで、増税後の日本経済を巡る課題のうち、中長期の課題は何か。それは、社会保障の給付と負担のバランスを図る抜本改革である。なぜならば、低成長で貧困化が進み、人口減少・少子高齢化が本格化する中、いま政治に求められているのは、社会保障の再構築であるからだ。


政府が改革議論の参考に位置付けるのは、2018年5月公表の「2040年を見据えた社会保障の将来見通し(議論の素材)」(以下「将来見通し」という)だが、団塊の世代が75歳以上となる2025年問題もあり、不確実性が高い2040年の推計を前提に議論を進めるのは一定のリスクを伴う。


この将来見通しでは、高成長と低成長の2ケースで、社会保障給付費を推計している。このうち低成長のベースラインケースでは、直近(2018年度)で121.3兆円(対GDP比21.5%)の社会保障給付費が、2025年度で約140兆円(対GDP比21.8%)、2040年度で約190兆円(対GDP比24%)となる推計だ。2040年度までに対GDP比で2.5%ポイント(=24%-21.5%)しか伸びず、改革を急ぐ必要はないとの声も聞こえてくるが、2019年度の社会保障給付費(予算ベース)は対前年2.4兆円増の123.7兆円、対GDP比22.1%で、2025年度の予測値(21.8%)を既に上回っているのが現実だ(注:2019年度GDPは内閣府7月試算を利用)。


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