私のパフォーマンス理論 vol.51 -なぜ私は金メダルが取れなかったのか-
Japan In-depth / 2019年12月30日 7時0分
為末大(スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役)
【まとめ】
金メダルを取れなかった理由の個人分析の結果は、幼少期の水泳の影響、中学時代の地面のキックの癖、世界に出るのが遅れた、走り込みをしすぎた、メンター的な役割のメンターをつけなかったの5点。
コーチというよりも、経験豊か(競技以外も含めて)で、客観的な視点でアドバイスをくれる人間と組めればよかった
他人の失敗談ほど学びになるものはない
なぜ私は金・銀メダルが取れなかったのか。そもそも銅メダルが能力の限界だったということ、また”もしも”を考えてもしょうがないということはわかった上で、もしもう一度競技人生をやり直すならこれを変えるということを自分なりに分析してみたい。
1、幼少期の水泳
私は幼少期に水泳をやっていて、キックの影響か足首関節が柔らかく水泳選手ほどではないが足首関節が底屈する。先天性かもしれないと疑い、姉の走りと妹の走りを観察したことがあるがそれほどではなかったので、後天的なもので水泳の影響ではないかと疑っている。走りの動作において、足首関節が底屈することは望ましくない。高い疾走速度では足首の関節角度はほぼ一定の状態が望ましいとされ、むしろ足首関節の可動域が狭い方がよい。ところが私は足首関節の可動域がかなり広く、接地後半局面で足首が底屈し、少し足が後ろに流れてしまい最高速度を上げることを阻害していると感じていた。足首が硬ければ多少最高速度が高かったと思う。
2、中学時代の地面のキック
私達の時代は、マック式トレーニングが流行った時代で、私も中学時代は本を読み漁り、マック式トレーニングを行った。あまり理解度が高くなかったこともあり、地面に接地する瞬間の足首のキックを妙に意識してしまいその癖がついた。また、そのキックを強くするためにカーフレイズなどのトレーニングも行った。そのせいか中学三年間で、足首を接地した瞬間と、離地局面でやや動かしてしまう癖が残った。これも1と同じように最高速度に制限をかけたと感じている。また人生終盤のアキレス腱痛もこの影響ではないかと考えている。
3、世界に出るのが遅れた
私が初めて自分の意思で一人で世界に出たのは22歳の時だったが、世界に出るのが遅すぎたと感じている。もっと早く(15-18歳)世界を経験し、当たり前の基準を上げておくべきだった。日本の陸上界はおそらく世界一感覚を重視するが、逆に言えば本質の部分に徹底的にフォーカスすることが苦手だ。世界に出て、枝葉は適当でいいと感じたと当時に、最も重要な股関節進展や、加速はもっとレベルを上げないといけないと感じた。競技人生の前半は日本の中だったので、それほど本質にフォーカスしなくても活躍できてしまったが故に、遠回りをしたと感じている。
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