イラン発火点の世界大激動も【2020年を占う・中東】
Japan In-depth / 2019年12月29日 11時0分
▲写真 爆発直後に撮影された、煙を噴き上げるベイルート国際空港のアメリカ海兵隊兵舎 出典:パブリックドメイン
2019年5月以降、米国はペルシャ湾周辺への空母打撃群と爆撃部隊の増派を続け、イランへの軍事圧力を強めている。もし革命防衛隊や「イランの息の掛かった」武装勢力が、米国人に死者を出すような攻撃を実行すれば、「スポンサー」たるイランに「圧倒的報復」を加える態勢を確保し、テロを抑止するのが増派の第一目的である。
第二の目的は、経済制裁の徹底である。経済制裁と軍事圧力は一応別物だが、戦雲垂れ込める地域に投資しようという企業はない。軍事圧力には、企業の投資意欲を削ぎ、撤退を促す効果、すなわち経済制裁の実効性を高める効果がある。
アメリカが実行しているのは、イランに関する米国内法を根拠とした「単独制裁」だが、アメリカの場合、国際的制裁と同様の効果を生み出しうるツールを複数持っている。
すなわち、
①イランと取引を続ける企業の米国市場からの締め出し
②米金融市場(ドル取引)からの締め出し
③イランとの取引を隠して米市場に参入した企業・経営者に国際水準を
上回る厳しい刑事罰を科す
④上述の軍事圧力を通じた制裁の実効性確保
などである。
いずれも他国企業に、米「単独制裁」に従うことを余儀なくさせるアメリカならではの政策手段と言える。
日本では、「制裁は単独で実施しても効果がない」で話が終わりがちだが、アメリカでは、上記4手段を用いて「単独制裁」をどこまで国際化していくが論点となる。
なお、2018年12月、米国は、中国の通信機器最大手ファーウェイの副会長兼最高財務責任者(CFO)の孟晩舟氏をカナダ当局に依頼し身柄拘束したが、これは上記③の枠組を使ったものであった。すなわち、在香港子会社によるイランとの取引が実態はファーウェイ本体による偽装取引であり、イラン制裁法違反に当たるというものだった。
ファーウェイ副会長は、今後米国に移送され裁判となれば、金融機関への虚偽報告などの罪状を併せ懲役60年超の判決もあり得るという。そのことは被疑者が、米国情報機関の庇護の下での平穏な生活と引き換えに「全てを吐く」司法取引に応じる誘引ともなる。イラン制裁法は中国締め付けの武器にも使われているわけである。
2019年12月20日、イランのロウハニ大統領(最高権力者はアヤトラ・ハメネイ氏であり、ロウハニ氏の実態は秘書室長に近い)が来日した。
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