北朝鮮、対米「蜜月」終焉へ【2020年を占う・国際情勢】
Japan In-depth / 2020年1月2日 7時0分
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
【まとめ】
・北朝鮮は対米「蜜月」終わり、再び強硬化する。
・中国はトランプ政権と取引せず、香港やウイグルで人権侵害続ける。
・日中関係は戦術的に改善する。
尊敬する本誌編集長より「国際情勢の今後を考える指針を2000字ほどで書く」よう指示されたのは12月初旬。あれから色々考えてみたのだが、どうも良いアイディアが浮かばない。そりゃ当然だろう、米中経済、日韓関係、北朝鮮の動向、英国のEU離脱、ペルシャ湾での緊張拡大などの例を挙げるまでもなく、2019年は通常の年に増して、政治経済的不確実性が異様に高まった一年だからだ。
されば、今の筆者には「国際情勢の今後を考える指針」を偉そうに語る自信など微塵もない。ではどうするか。筆者の結論は、「2020年に何が起きるか」の予想ではなく、本誌のご要望通り、今後を考える「指針」のみに絞って書くことだった。「指針」を書くなら比較的簡単ではないかなぁ。という訳で、今回は、この種の原稿を書く際に筆者が用いる「思考プロセス」をご紹介することにした。2020年が皆さまにとって良い年となりますように。
1.世の中に未来を予測する「水晶玉」はない
第一の指針は、そもそも「人間に未来予測など不可能」ということだ。未来予測できる超能力を持つと言われる人間の殆どはインチキである。世の中には「水晶玉」などないし、如何なる占い師も大専門家も、誰も未来を正確に予測することはできない。これが世の中の現実である。されば、筆者にできることは、過去の歴史の流れから、自らの経験則に基づき、未来の事象を推測するための「仮説」を考えることだけだ。
2.常に予測が正しい人・団体はない
第二の指針は、一人の人間や一つの会社の予測が常に正しいことは、絶対にないということだ。それでも毎年この時期になると、有象無象の未来予測や「地政学」リスク評論が世に溢れ出る。出版社や著者が悪いのではない。その種の未来予測を求める需要が必ず存在するからだ。知的に正直な人間であればあるほど、そうした将来リスク予想をビジネスにすることが如何に不正直なことか分かっているはずなのだが。
3.悲観論が常に正しいとは限らない
第三の指針は悲観論の是非である。筆者が尊敬するエコノミストが2020年国際情勢について書いた。エコにミストにもかかわらず(失礼!)政治が分かるその稀有な論客は来年について「楽観的見解」を書いている。なるほどとは思うが、中東生活が長かったせいか、筆者は常に悲観論者だ。しかし、だからといって、悲観的予測が常に正しいとは限らない。それは「逆張りオタク」が常に正しいとは限らないのと同じである。
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