乳がん検診、マンモの意義【2020年を占う・医療】
Japan In-depth / 2020年1月2日 11時24分
日本においては、同様のケースに対して、造影MRIの代わりに乳房超音波検査が選択されることも多い。しかし、乳房超音波検査においては、造影MRIに比較して、追加の乳がんの検出能が低く、一方で、偽陽性が多いという意見が趨勢を占めている(6)。
私に関して言えば、同様(異常はないがデンスブレスト)のケースに外来で出くわしたとしたら、まずは、造影MRIに比較して、体の負担が少ない乳房超音波検査を実施する。すると大部分のケースにおいては何らかの異常が指摘される。そのため、積極的に乳がんを疑っていなくても、追加で針生検を実施するか、半年後などに再度乳房超音波検査を実施することが増えてしまう。このような対応は見逃しを防ぐ上で必要とは考えているが、外来診療を圧迫しているのも事実であり、頭を悩ませている。
そして、最大の問題は、造影MRI検査なり乳房超音波検査なり追加の検査を実施して乳がんが発見された場合に、それが死亡率減少に結びつくかがはっきりしないことである。単純MRI(7)や自動超音波画像診断装置などによる乳がん検診、さらに、リキッドバイオプシーのように血液検査で乳がんを検出する技術も昨今開発されているが、やはり同様の問題を抱えている。
いずれにしても、新旧かかわらず、ここに挙げたような技術が、死亡率減少に結びつくか判断するためには十分な観察期間が必要であり、今後早い時期に結果が明らかになることはないだろう。
ではどうしたらいいか。ここで念頭におくべきは、乳がん検診は究極的には予防医学であり、保険医療の範疇を超えていることだ。そのため、マンモグラフィーを基本としつつも、それを超える検査については、対象者個人が納得して費用を払い、検査を受けている限りは、エビデンスが乏しいとしても、外野が横槍を入れる必要は必ずしもないように思う。
そして、医療者としては、そのような対象者の意思決定をサポートするために、一人ひとりにそれぞれの検査のメリットとデメリット、わかっていることとわかっていないことをファクトベースで丁寧に説明していくことが主たる役割になるだろう。
筆者の私見では、マンモグラフィーを補う技術に対してのニーズは確実に存在していると考えている。そして、今後そのような技術の存在感は高まっていくと予想している。そのような変化の萌芽が現れることを期待しながら、2020年を過ごしてみたい。
-引用文献-
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