「分断の時代」に終止符を(下)【2020年を占う・社会】
Japan In-depth / 2020年1月5日 11時0分
ところが、バブル崩壊以降の日本の税制は、これとは逆の方向に進んできた。詳しくは前掲書をご一読いただきたいが、
「大企業や富裕層からちゃんと税金を取らなかったから、消費税を繰り返し引き上げねばならなくなった」
ということは、様々なデータから、はっきり読み取れるのだ。
財政出動について言うと、安倍政権下で、数次にわたってすでに行われ、総額は国家予算のおよそ1年分、80兆円強に達している。しかし、その多くは災害復興支援などに使われたもので、必要なことではあったが、悪く言えば後手後手に回った感は否めないし、これまたすでに述べた、中長期的な財政再建のヴィジョンも見えてこない。だから私は、デフレ脱却が果たせていない現状下での消費税引き上げを「大失政」だと糾弾したのだ。
あえて言おう。2020年いっぱいの時限措置でよいから、消費税は5%に引き下げるべきである。一方、ここでさらに100兆円規模の財政出動を行っても、日本経済がただちに破綻する気遣いはない。このことは財務省のデータからも明らかだ。
その使い道だが、ひとつは今も述べた、災害対策と原発事故の後始末。そしてもうひとつは、政策的に最低賃金を引き上げたり、EU諸国ですでに実行されているように、新規雇用に対しては当初の給与や研修費用を政府が補助したり、いわゆる子育て支援を充実させることだ。
その結果、安倍政権が当初から掲げてきた「インフレ率2%」を超え、4%くらいになったら、そこで増税に転じてよいのだが、その際は所得税の累進制を見直し、さらにはフランスの経済学者トマ・ピケティが提唱する「金融資産への課税」も検討に値する。ヨーロッパでは、そんなことをすれば富裕層の資産は容易にタックス・ヘイブンに流出してしまう、との反論があるが、日本では監視や徴税が緻密なので、そのリスクも低い。要は「取りやすいところから取る」税制から「払うべき層に払ってもらう」税制への転換である。
若い世代を中心に、
「自分たち〈下流〉は、努力しても報われない」
という閉塞感が蔓延し、その副作用としてネットが荒れ放題というような世相には、一日も早く終止符を打たねばならない。今年を、その手始めとなる年にしようではないか。
(上はこちら、全2回)
トップ写真:日本紙幣 出典:Pixabay by Maccabee
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