ゴーン、レバノンでも安息無し
Japan In-depth / 2020年1月7日 18時0分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
【まとめ】
・ゴーン被告、レバノンでも当局に厳しい扱いを受けるかもしれない。
・レバノンの国法に違反した容疑で刑事訴追される可能性あり。
・国際的な注目度を利用され、政治抗争に巻き込まれる可能性も。
日本での保釈中に国外に逃亡し、レバノンに入国した日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告は母国のレバノンでは好待遇を受けるという予測が大方である。しかし一方では、なおレバノンでも当局に厳しい扱いを受ける可能性も指摘されている。別件での違法行為を追及されることと、政治的に利用されること、という二つの危険なシナリオだという。
写真)レバノンの国旗
出典)pixabay
ゴーン被告はレバノン人を両親に持ち、レバノンで育ち、国籍も有する。ブラジルやフランスの国籍も保持するが、日本との犯罪逃亡者引き渡し協定もないレバノンでは政府代表がすでに日本への送還はしないとの方針を述べた。その結果、同被告にとっては快適な暮らしの見通しも生まれてきた。日本での犯罪の訴追もレバノンでは白紙に戻る展望さえみえてきたわけだ。
ところがレバノンの首都ベイルートからのフランスのAFP通信の報道などによると、ゴーン被告には思わぬ難関や災難もありうるという。
その第一はゴーン被告がレバノンでの国法に違反した容疑で刑事訴追される可能性である。
レバノンはイスラエルといまも戦争状態にあり、自国民のイスラエル入国を法律で禁止している。ところがゴーン被告は2008年にフランスのルノー社の代表としてイスラエルを訪れ、政府要人らと会談した記録がある。この時もレバノン国籍を保持していた。
レバノンの首都ベイルートではこの事実を重視した地元の法律家グループが1月2日、検察当局にゴーン被告の起訴を求める陳情書を提出した。
同グループの代表のアリ・アバス弁護士はAFP通信に「敵国としてレバノンを軍事攻撃し、多数の死傷者を出したイスラエルをレバノンの国法を破って訪れたゴーン氏をヒーローのように歓迎することは法治国家として許容されるべきではない。レバノンの法律を適用し、裁かれるべきだ」と語った。
ゴーン被告は2008年当時、イスラエルとの間で電気自動車の開発を協議するため、訪問したという。時効が適用される可能性もあるが、最悪の場合、国家反逆罪で懲役15年の刑にも相当しうるとされる。
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