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「井戸端長屋」とは 福島相馬市リポート その2

Japan In-depth / 2020年1月20日 20時21分


▲写真 井戸端長屋での一幕 出典:著者提供


この秘密は、「井戸端」にあるという。住宅の中には洗濯機があるが、あえて共用スペースの中にあり、その上入居者の人数より少なくなっている。こうすることで、順番待ちの際に必然的に会話が生じ、一定のコミュニケーションが担保されている。


別の機会に、相馬市役所保健福祉部健康福祉課の牛安澤美智課長補佐にお話を伺った際、健康寿命を伸ばすために「外に出て、顔を合わせる」ことが重要である、とおっしゃっていたことが大変印象的であった。これはまさに井戸端長屋で採用されていることである。


コミュニティは、井戸端長屋のような日常生活の場は勿論、市役所や病院のような職能集団でも、学校のような教育現場でも形成される。そのどれもが、一定の流動性を持つことで成員の自治、自己陶冶が促進され、健やかな形で安定する。


そこで、いわゆる「新しい風」を吹き込む為の方策も、相馬市が力を入れてきたものだ。教育分野において、それは顕著だ。


インターンシップ中の休日、東京大学の友人が相馬市に来てくれた。「寺子屋事業」という学習支援のボランティアとして、サークルから派遣されてきたという。折角の機会なので自分も参加させてもらい、中学生に勉強を教えた。その翌週、今度は代々木ゼミナールの現代文講師で、東京大学剣道部の大先輩でもある藤井健志先輩と、灘高等学校の英語教師の木村達哉先生、「遊歴算家」の予備校講師の数理哲人先生の3人により、相馬市にて「夢をかなえる勉強会14」が開かれた。自分も足を運び、高校生の前で少しだけ話をさせてもらったのだが、高校生の熱い視線に押されてすっかり緊張してしまった。授業をされる先生方の胆力、そして学生の熱意を実感した。


これらの行事を通し、教育現場に外部の人材を呼び込む素地が、相馬市にはある。震災直後から相馬市において対応をしてきたのが、相馬高校の元教員であり、現在は隣の新地町にある新地高校にて教鞭をとっている高村泰広先生だ。相馬市企画政策部の宇佐美清部長が「本気の人が1人いれば状況は変わる」とおっしゃっていたが、まさにそれを体現したようなエネルギッシュな方であった。


ここまでソフト面の話をしてきたが、勿論ハード面の施策も見逃すことはできない。


12月22日には、相馬市建設部の柏宏樹部長のお誘いを受け、相馬福島道路の相馬IC—相馬山上IC間の開通記念式典に参加した。立谷市長が、祝辞の中で相馬福島道路を「命の道」と称していたことが印象的であった。第三次救急病院を持たない相馬市では、福島市の医大病院への迅速な患者の搬送が長年の課題であった。そこで建設された高規格かつカーブの少ない道路は、まさにコミュニティを繋ぎ、命を救うものであった。


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