「井戸端長屋」とは 福島相馬市リポート その2
Japan In-depth / 2020年1月20日 20時21分
相馬中央病院では、内部被曝測定装置の「ホールボディーカウンター」による集団健診の運営と、そこで出たデータの取りまとめを行った。内部被曝測定といっても、今やほぼ全ての診断で放射性物質は検出限界以下だ。それでもなお診断を続けるのは、風評被害の対策が大きい。
三菱総研が昨年実施したアンケートによると、東京都民の半数近くが「放射線の影響により、福島県民に健康被害が発生する」と誤解しているという。東京に暮らす自分にとってもこれは衝撃的なことであった。震災後8年が経っても、まだこのような現実がある。こうした風評に対抗するためには、「安全」を示す客観的なデータの提示を地道に続けていくことが肝要である。相馬市は、市民に向けての健診を無料で行っている。
▲写真 ホールボディーカウンター 出典:著者提供
以上の施策を見ていくと、相馬市では、他のコミュニティとの交流を重視し流動性を高めながらも、その根底には「相馬市で引き受ける」という共通の考えがあることがわかる。既存のシステムに依存せず、常に新しい道を探っていくことそが、長期的な目線での効果に繋がる。それと共に、相馬市の持つ度量、懐の深さが、他の地域から人々を呼び寄せ、相馬市というコミュニティの復興をさらに促進している。こうした大局的かつ地に足の着いた発想は、我が国の他の地方も学ぶことが多い。
こうしたコミュニティの在り方は、他の地域から訪れた個人にも良い影響を及ぼしうる。まさに、このインターンシップでの私自身がそうだ。
インターンシップも終わりに近付いた頃、「ふくしま学びのネットワーク」事務局長の前川直哉先生のご紹介で、南相馬市小高での灘高等学校・筑波大附属駒場高等学校の「ふくしま「学」宿」に顔を出させて頂いた。筑波大附属駒場高等学校は私の母校である。当時の恩師もいらっしゃっており、御縁が巡り巡って行き着いた先に驚いた。
経験や知識を蓄積し物事を理解するという営みは、一生続く。学生という身は、まだそれを始めたばかりの状態だ。高校や大学という狭いコミュニティの中では、勿論深く学べることもあるが、どうしても近視眼的な考えになるきらいがある。自分から動き、違うコミュニティを見ることで、より幅広い知識と理解力が身につく。そういったことを、同じく修業中の自分より伝えた。
(その1の続き。全2回)
トップ写真:相馬IC—相馬山上IC間の開通記念式典 出典:著者提供
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