新型肺炎、お粗末な中国の対応
Japan In-depth / 2020年1月29日 12時22分
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
「宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2020#5」
2020年1月27日-2月2日
【まとめ】
・新型肺炎で日本政府はチャーター機を武漢に派遣。
・中国の新型肺炎への対応はお粗末。
・ボルトン前大統領補佐官は「ウクライナ疑惑」暴露本を出版予定。
前回簡単に触れた中国発の「新型肺炎」が今週遂にoutbreakの域に達した。武漢市在住邦人の「救出」のため、日本政府は民間チャーター機を派遣した。当然の措置だが、実現は容易ではなかっただろう。国内に住む外国人の保護は第一義的に受け入れ国の責任だからだ。今や中国も面子など構っていられない、ということか。
先週も書いた通り、2002-3年に広東省からSARSが大流行した際、筆者は北京在勤中だった。思った通り、今回も中国政府の対応は「当初患者数を過少報告し、その後爆発的増大に至る」というパターンを踏襲した。この種のウイルスの完全封じ込めが不可能なことは十分理解する。それにしても、中国の対応はあまりにお粗末なのだ。
このことを今週のJapanTimesと産経新聞の和英コラムに書いた。英語版の題はWhat goes up must come down、日本語版は「驕る中国は久しからず」とした。英語版は「スピニングホイール」という筆者お気に入りの曲から取った。意味は「紬車」、人生を「上に登れば必ず下に降りる」糸車に例えた含蓄の歌である。
https://www.japantimes.co.jp/opinion/2020/01/27/commentary/world-commentary/goes-must-come/#.Xi9yusj7SUk
中国はSARSの教訓を本当に学んだのか。なぜ今回も事実の開示が遅れたのか。中国の対外関係はどうなるか。今週はこれらについて言いたいことを言わせてもらった。筆者のSARSに関する教訓は、①中国の公式公表数は十倍にする、②官僚は責任を回避する、③彼らは何でも食べる、④被害より面子、が大事の4点である。
先にも述べた通り、新型ウイルスを完全に封じ込めるのは難しい。だから中国の医療関係者の献身的な努力は評価する。しかし、中国政府はいつまでこんなことを繰り返すのか。世界第二の経済を誇り、米国に追い付き追い越そうとする中国だが、決して驕ってはいけない。世の中はWhat goes up must come downだからである。
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